リメイクソングメーカー ~音楽は仕事と同じで改善できる!~ 第一回

音源リメイク

この記事の内容は

「かなり技術的」「わりと専門的」

目次

この図はなに?

皆さんこんにちは!ソングメーカー代表、井村淳也です。

今回のテーマはリメイクです。
私自身が、過去に制作・録音・編集した音源をベースに2020年バージョンにリメイクしたいと思います。

音楽は、一度作って終わりではありません。
時間が経ち、再度聞いてみた時に「もっと~したらよかったのに」という思いがあるならば、また作り直すことができます。

それは仕事と同じで「改善」につながるものです。
より満足のいく音源にできるようなリメイクを考えていければと思います。

その際、具体的に

  • どこが良くないのか
  • どうすれば良くなるのか
  • それはなぜか
  • 変更にあたっての注意点は何か

と言った部分を細かく見ていくことで、より分かりやすいリメイク工程をご説明できるのではないかと考えています。

元となる楽曲・思い

今回の対象となるのは、20年近く前に作った楽曲
Precious memories
です。

当時、新しいアルバムを作っていました。
Overcome the complex
というアルバムで、その中の一曲でした。ちなみに、11曲中3曲目です。

作った時は、「いいメロディ、いい曲ができた!」と自分なりに思ったものの、
いざ音源化して歌入れ、編集などを行い完成したのを聞いてみた時、「うーん…」という違和感を感じずにはいられなかったのを今でも覚えています。ただ、当時はそれがなぜなのか、イマイチよくわかりませんでした。

その理由として、当時の私の音楽制作における技術や経験不足が大いに起因していたのは否めませんが、それ以外にももっと基本的な構成要素、例えば

  • 歌詞
  • アレンジ
  • ギター
  • 和音の選択・進行

等が複雑に絡み合い、結果的に満足できない仕上がりになっていたのではないだろうかと思うのです。

そういった部分も大いに掘り下げながら、長い時を経て今回こそは満足できる音源制作を実現したいと思います!

それでは以下、各パートについての詳細を見ていきたいと思います。

各パートの解説・リメイク案

音源

実際の音源はこちらです。まずは、聞いてみてください。この記事が初公開となります。
制作面での役割は今とほぼ同じで、音源制作から歌、ギター演奏、編集まで自分で行っています。

当時の制作背景

楽曲収録アルバムの
Overcome the complex
は、自分自身のコンプレックスを乗り越えていく、そんな意味を込めたアルバムでした。
具体的には「歌」の部分です。
以前の私はシンガーソングライターとして活動していましたが、どうしても歌のスキル、表現力に不安があり、自分の求める理想の姿には程遠い歌唱で悩んでいました。

もともと声が低い私は、高音ボーカルにあこがれ、音域を無理やり広げようとしていた時期もあります。
そんな時期を一旦は乗り越え、よし、別に高い声を無理に出さなくてもいいんだ、自分の出せる自然な音域で歌うことも大切なんだ、という思いから、新たな方向性を模索していた時期でした。

そういう考え方、ポジティブなとらえ方自体は決して悪くないと思うのですが、いかんせん研究不足の部分が強く、中途半端な仕上がりになってしまったと感じます。
例えば歌のキー設定についても、無理に高い声を出さなくていいと言いながら、どこかで高音へのこだわりを捨てきれずにいました。
今回の楽曲も、ハイトーンで伸ばす部分にその影響がみられ、苦しそうな発声をしています。
また全体的に力んで歌っているため、聞きづらさが目立ちます。これは私の歌の癖のようなものですが、これを低い音域でしてしまうとより聞きづらい歌になってしまいます。

そのあたりを踏まえつつ、リメイクバージョンの制作を進めていきます。

反省点

今聞いてみると、まず歌に関しては
低い部分は力み。
高い部分は無理してシャウト。

何というか、わざわざ歌を難しい方向にしてしまっている印象です。

また編集面では、ボーカルの音量が低く聞き取りづらいです。
全体の音質もこもっていて聞き取りづらいです。

ギターの演奏ですが、そもそもエレキギターが必要かな?という印象です。
ギター以外の楽器とバッティングしているようで、お互いの良さを打ち消しているような印象です。

そういった部分を解決できるようなリメイクにしたいと思っています。

歌詞

歌詞は以下のようになっています。

Precious memories(リメイク前の歌詞)

はしゃいだことも 抱き合ったあの夜も
泣かせたことも 今は もう思い出

一人閉ざした心 そっと 開けてくれたね

忘れないよ どんなときも 優しいおまえがくれた 何もかも
Oh precious memories 消えないよ いつまでも
時が流れても

冬のスケート 初めてのお泊り
三度目の誕生日 ぜんぶ いい思い出

おまえ守れるように ずっと そばにいるよ

忘れないで 苦しい時は 優しく俺が包んであげるから
Oh precious memories 変わらない おまえなら 二人なら

忘れないよ どんなときも 優しいおまえがくれた 何もかも
Oh precious memories 消えないよ いつまでも
時が流れても

一人称が「俺」になっています。これ自体は悪いことではないのですが、どうも独りよがりというか俺様感が強く出された歌詞になっているようです。

そのため、一人称を「僕」に変更します。

それに伴い、2番のサビ部分

(旧)
忘れないで 苦しい時は 優しく 俺が包んであげるから
Oh precious memories 変わらない おまえなら 二人なら

の部分も変えてみたいと思いました。

(新)
君のためにしてあげたい いつだって 僕にできること 何もかも
Oh precious memories 変わらない 君となら 二人なら

とします。

旧歌詞は、どこか上から目線というか、悪く言えば「やってやる」という感じが強いので、
「してあげたいんだ」という思いを伝えられるように、また、できるだけわかりやすい表現を心がけてみました。
また最初のサビと繰り返しているような印象がありますので、その点も改善しています。
繰り返しが悪いわけではありませんが、今回は変化を出したいと考えました。

また

(旧)
おまえがくれた 何もかも

も、おまえを君に変えるのですが、文字数が足りないので

(新)
君がくれたもの 何もかも

に変えました。
文字数を補うためにやや仕方なく加えた変更なのですが、結果として新しいタイトルにできるような良い雰囲気を持たせることができたと思います。
こんな風に、リメイクで良い方向にもっていくことができれば理想的です。

後はそれほど変えるべき部分はないかなと思いますので、結果、新しい歌詞は以下のようになります。

君がくれたもの(リメイク後の歌詞)

はしゃいだことも 抱き合ったあの夜も
泣かせたことも 今は もう思い出

一人閉ざした心 そっと 開けてくれたね

忘れないよ どんなときも 優しい君がくれたもの 何もかも
Oh precious memories 消えないよ いつまでも
時が流れても

冬のスケート 初めてのお泊り
三度目の誕生日 ぜんぶ いい思い出

君を守れるように もっと 強くなるよ

君のために してあげたい いつだって 僕ができること 何もかも
Oh precious memories 変わらない 君となら 二人なら

忘れないよ どんなときも 優しい君がくれたもの 何もかも
Oh precious memories 消えないよ いつまでも
時が流れても

タイトル

一緒に過ごした貴重な思い出を、いつまでも大切にして忘れないよ。
そんなメッセージを込めてこのタイトルにしているのですが、今見ると少しわかりづらいというか、メッセージ性が乏しいような、インパクトに欠けるような印象があります。

上記のように歌詞を変えていますので、タイトルも思い切って
君がくれたもの
に変えることにします。

タイトルが英語だからよくない、日本語だからいい、ということでは決してありませんが、今回の場合、曲調や歌詞のイメージから考えても、新しいタイトルのほうが良さが出せるのではないかと考えました。

キー

もともとは、最高音がミという設定です。(サビ終わりの裏声部分は除く)
サビの高音で伸ばす部分、聞いていただくと少し苦しそうです。
曲調から考えても、もっと自然に、柔らかいイメージで歌うべきかと思いますので、全体のキーを1つ下げ、地声での最高音がレ#になるようにしました。

結果、調はD#メジャー(嬰ニ長調)となります。

アレンジ

全体的にロック調になっていますが、この曲の雰囲気と合わない感じがします。

アコギとピアノをメインにアレンジして、ドラムはサビ等、部分的に控えめに入れていく程度にしたいと思います。

ソロはエレキギターで弾いています。
メロディ自体はいいと思いますが、全体のアレンジと同様、ロック色が強くないほうがこの曲に合いそうですので、別の楽器で入れていくことにします。

イントロは、サビのメロディを引用しているところはいいのですが、少しシンプル過ぎる印象。
その点に手を加えていきます。

歌い方

或る意味で、最も変えるべきポイントです。

上述の通り、妙に力んで歌っている印象があります。
特にサビの入り「忘れ」の「わ」のあたりなど、とても目立ちます。

当時の自分が考えたこと。

「自然に、自分の楽な歌い方で歌おう。そのほうが自分の良さが出せるはず」

これは正しいことを言っているようで、実は少し違っています。

必ずしも「自分の楽な歌い方=良い歌い方」というわけではありません。

楽に歌うことで、しゃくりあげたり、音程が不安定だったり、発声がよくなかったりします。
この楽曲でも、そういう「悪さ」が多く出てしまっている印象です。

当然、音程や発声には気を配るべきです。
特にこの曲は、Aメロ、サビを中心に音程の移動が多く、一音、一音注意を払いながら発声しないといけません。

当時の自分では思いもよらなかったことでしょうが、今考えてみると、歌い方の基本的な部分ができていないことで聞きづらい仕上がりになっていることが分かります。

逆に言えば、歌い方ひとつとっても変える部分が大きいため、ガラリと違う仕上がりにできるのではないでしょうか。

リメイク案まとめ

とても長い記事になりましたが、いかがでしょうか?
主な変更点をまとめると以下になります。

歌詞…一人称を「俺」から「僕」に変更、その他も全体的に見直す。
タイトル…「君がくれたもの」に変更。
キー…苦しそうなので1つ下げる。
アレンジ…ロック調が合わないのでピアノ・アコギメインに変更。エレキギターは思い切ってなくす。
歌い方…音程、発声に気を配りつつ、力まず自然な発声を心がける。

全体を通して、かなり手を加える形になりそうです。
次回の記事では、実際に制作した新しい音源を聞いていただきたいと思います。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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