「まるごとソングメーカー」1-1 楽曲企画

アルジャーノンに花束を

皆さんこんにちは!ソングメーカー代表、井村淳也です。

今回から、以前の記事でご紹介した企画
「まるごとソングメーカー」
を始めていきます。

今回は、最初のステップとなる部分、どんな楽曲を作っていくか?の企画段階となります。

制作テーマの概要

今回、楽曲の参考テーマとしてあげたのは、小説「アルジャーノンに花束を」です。

以下、ネタバレを多く含みますので、未読の方はどうかお気をつけ下さい。どうしてもこの作品の背景を説明する必要がありますので、これから小説を読む、ドラマを見ると言う方は、以下の閲覧をお控えいただくことをおすすめします。

チャーリィが3月8日に脳の手術を行い、11月18日に最後の経過報告を書くまでの8ヶ月間、自らの変化に戸惑いながら、周りの人間と現実社会の姿に傷つきながら、たとえようも無い孤独感を募らせていきました。

そんな中、何度も諍い衝突しながらも心からお互いを求めあったただ一人の人、アリス。彼女はおそらくチャーリィが愛したただ一人の女性です。最終的には二人は離れ離れになってしまうとても悲しい物語なのですが、そんな中、お互いの思いをぶつけ合った末にやっと結ばれた一日が綴られています。

キーとなる一日

それは10月11日。最終経過報告の1ヶ月前です。彼が母親と妹に会ってから2週間後のこと。既にチャーリィの知能退化は波のように押し寄せ、もはやとどめることはできない状態でした。
長く苦しみ続け、葛藤を繰り返していたチャーリィとアリスにとってこの一日があったことが、この小説にとっての何かひとつのあたたかな光のような、安らぎのような、幸せは確かにそこにあったと感じられる特別な一日として描かれているような気がしてなりません。

この日も実は、チャーリィはアリスを一旦は拒もうとしました。それは、彼女を愛していないからではなく、彼女の思いにこたえられないもどかしさ、自分自身の心と体がひとつにならないことの苦しみ。そんな思いからだったのではないでしょうか。

そこを乗り越えさせたのがアリスその人の強引な行動でした。彼女にも相当な決心、強い思いがあってこそ二人は初めて結ばれたのだと思います。チャーリィがおそらく、生まれて初めて感じられた心からの安心感、安らぎ、幸福感。肉体を超えて心で通じ合えたような感覚。そこにあったものはいつか二人が離れ離れになったとしても、心の中にいつまでも生き続けるものではないかと思うのです。

なぜこの作品を選んだのか

そんなシーンを今回の楽曲のテーマにしたいと思いました。アルジャーノンに花束を、この作品はいわゆるSF作品に分類されるようですが、SF的な設定の中にある人間のあり方が、強く胸を打つ作品です。わずか8ヶ月間の間に一生分以上の経験をしたチャーリィの姿は、どこか私たち人間の人生を縮図にしたような気がするのです。

私は長い間、人間関係で悩み苦しんできました。人と接して生きて行く中で自分はどのように自分を表現していけばいいのかと思い悩み、居場所が見つけられず生きることへの希望を見出せない、そんな時期を長く過ごしてきました。だからこそ、この作品に強い感銘をうけるのだと思っています。

この作品の冒頭に、作者にあてた日本人女性の手紙について作者の思いが触れられています。いわく、彼女は「私こそがチャーリィ・ゴードンではないかと感じた」そうです。
彼女に限らず、世界中にチャーリィを自分自身に投影した人は多くいたとのことですし、実際そうだろうと思います。
そして、私もそんな一人でした。その思いを、思いが冷めないうちに表現したいと思ったんです。それは、音楽家として生きている私にとっての挑戦でもあるように思えるんです。

制作への思い

今回はほとんど、「アルジャーノンに花束を」のレビューのような内容になってしまいましたが、この素晴らしい作品に出会えて、またこうしてその作品をテーマにした音楽を作り発表できるこの場所があることに、深く感謝しています。作品の名に恥じないような楽曲を作れるようにがんばります!

10月11日、その日にチャーリィが感じたことをチャーリィの主観で綴ってみたいと思います。我ながら、この世界的名作を引き合いに出すというハードルを思い切り高くしてしまって不安もありますけど、この作品への思いを、私の音楽への思いと融合させて制作できればと思っています。

大まかな作曲イメージ

比較的ゆったりとしたテンポの楽曲にしようと考えています。
楽曲のテーマから考えても、あまり早いテンポよりはそちらのほうが合うはずです。
メロディラインにはこだわりたいと考えています。ただ、後から歌うことを想定し、あまり動きの激しすぎないメロディラインに収めることも視野に入れていきます。

使用する楽器としては、表現したい雰囲気が「悲しみ、孤独、絶望」と言った負のイメージを中心として、その中にわずかに感じられる「ぬくもり、喜び、生きることへの執着」のような強さもある。漠然とそのようなイメージを考えていますので、楽器もその表現が可能なものを選びたいと思います。

具体的にはピアノ、ギターは使うことになると思いますが、それ以外にも特徴的な音色をもつ楽器を使ってみたいです。

まず、最初の企画段階の記事はこのくらいでまとめてみました。次回以降、実際の制作に入っていきます。
最後までお読みくださりありがとうございました。

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