
みなさんこんにちは!ソングメーカー代表兼制作者、中小企業診断士の井村淳也です。
経営者の方とお会いするたびに思うこと。
行動指針やスローガン。あなたの会社にもおそらく、何らかのこうした「お題目」が掲げられているのではないでしょうか。
しかし、それが形だけのものになってしまっている現場が少なくない。
――これは診断士として多くの現場で痛感することです。
こちらは私が中小企業診断士として代表を務める、ソング中小企業診断士事務所のホームページです。

行動指針は、ちゃんとある。
会議室の壁にも、廊下にも、社内ポータルにも貼ってある。
言っていることも、間違っていない。
それなのに――
現場の判断はバラバラで、行動もそろわない。
「行動指針が形骸化している」と感じている企業は少なくありません。
けれど問題は、行動指針の“内容”ではないことがほとんどです。
多くの組織で起きているのは、
行動指針が
- 読まれる言葉
- 掲げられるスローガン
で止まり、
使われる言葉になっていないという構造的な問題です。
現場が本当に必要としているのは、
「正しい言葉」ではなく、
迷ったときに立ち返れる共通の判断基準です。
本記事では、
壁に貼られた行動指針を、
現場で自然に使われる“共通言語”へと変えるための
3つの絶対条件を整理します。
なぜ行動指針は使われなくなるのか。
どうすれば、会話や判断の中に出てくる言葉になるのか。
そして、それが組織にどんな変化をもたらすのか。
行動指針を「あるだけの言葉」で終わらせないための、
設計の話を始めます。
この記事を読むことで得られること
- 行動指針が「正しいのに使われない」本当の原因(内容ではなく“設計”の問題)を整理できます
- 壁に貼られた言葉を、現場の判断に使える“共通言語”へ変えるための3つの条件が明確になります
- 行動指針が機能したときに起きる組織の変化(指示の減少・判断の統一・育成への波及)が具体的にイメージできます
まず結論:行動指針は「良い言葉を掲げること」ではなく、判断・会話・感情に接続する“使われる構造”を設計して初めて、現場の共通言語になります。
なぜ行動指針は「正しいのに、使われない」のか
多くの企業で行動指針は、内容としては「正しい」ものになっています。
顧客志向、挑戦、誠実さ、チームワーク。
どれも否定しようのない言葉です。
それにもかかわらず、現場ではほとんど使われない。
その最大の理由は、行動指針が掲示物として設計されているからです。
行動指針が“掲示物”で終わってしまう構造
行動指針は、多くの場合
- 額に入れられ
- 壁に貼られ
- 朝礼で読み上げられ
ます。
しかし、その言葉が
現場の判断や会話に登場するかというと、話は別です。
掲示されているだけの行動指針は、
「守るべき理想」にはなっても、
「使える道具」にはなりません。
結果として、行動指針は
“見慣れた背景”になり、
意識の外に追いやられていきます。
抽象的スローガンが現場判断に使えない理由
形骸化している行動指針の多くは、
抽象度が高すぎるという共通点を持っています。
たとえば、
「顧客第一で行動する」と書かれていても、
- 納期を優先すべきか
- コストを優先すべきか
- 品質を守るために断るべきか
といった具体的な場面では、
その言葉は判断材料になりません。
現場で求められているのは、
「正しそうな言葉」ではなく、
この場面ならどうするかがわかる言葉です。
「知っている」と「使える」の決定的な違い
行動指針が使われない組織では、
社員はその内容を「知っています」。
しかし、
知っている=使える ではありません。
使える行動指針とは、
- 迷ったときに思い出せる
- 会話の中で自然に出てくる
- 判断の根拠として共有できる
こうした状態になっている言葉です。
つまり、行動指針が使われない問題は、
理解不足ではなく、翻訳不足・設計不足の問題なのです。
診断士視点:形骸化した行動指針に共通する特徴
診断士として多くの組織を見てきて感じる、
形骸化した行動指針には、はっきりした特徴があります。
- 判断に使われた事例が共有されていない
- 評価や育成と一切つながっていない
- 「それ、行動指針的にどうなの?」という会話がない
つまり、行動指針が
組織の中で循環していないのです。
行動指針は、
掲げた瞬間に機能するものではありません。
使われる前提で設計されて初めて、現場の共通言語になります。
条件①:行動指針は「判断の言葉」まで落ちているか
行動指針が本当に力を発揮するのは、
社員が迷ったときです。
判断に正解がなく、
上司に聞くほどでもない。
でも、この選択が会社として合っているのか不安になる。
行動指針は、まさにその瞬間のために存在します。
逆に言えば、
迷った場面で使えない行動指針は、どれだけ立派でも機能しません。
行動指針が機能する場面は“迷ったとき”
行動指針が必要とされるのは、
マニュアルが通用しない場面です。
- 顧客の要望をどこまで受けるか
- 例外対応を認めるか
- 短期成果と長期信頼のどちらを取るか
こうした判断は、
ルールだけでは決められません。
このとき、
「会社として、どちらを選ぶのか」
を示せる言葉があるかどうか。
それが、行動指針が生きるか死ぬかの分かれ目です。
現場判断に使えない指針の典型例
現場で使えない行動指針には、
典型的なパターンがあります。
- 「常に最善を尽くす」
- 「挑戦を恐れない」
- 「誠実に行動する」
どれも正しい。
しかし、判断は一つも導けません。
これらの言葉は、
行動の方向性ではなく、姿勢の宣言に留まっています。
結果として、現場では別の基準――
上司の顔色、過去の前例、暗黙の空気――
で判断が下されていきます。
「この場面なら、どうする?」まで翻訳されているか
使われる行動指針は、
必ず場面とセットで語られています。
- こういうときは、こちらを優先する
- 迷ったら、この判断を取る
- この選択をしたら、この会社らしい
つまり、
「この言葉があるから、こう判断した」
と言える状態です。
行動指針を機能させるには、
抽象的な言葉を、
具体的な判断フレーズに翻訳する工程が欠かせません。
行動指針を“選択基準”に変える設計
行動指針を共通言語にするとは、
全員に覚えさせることではありません。
- 判断に使われた事例が共有されている
- 「行動指針的にはどっち?」という問いが飛び交う
- 結果ではなく、判断理由が評価される
こうした環境があって初めて、
行動指針は選択基準になります。
行動指針は、
理念の要約ではありません。
迷いを減らすための道具です。
条件②:行動指針が「語られる構造」になっているか
行動指針は、説明された瞬間に機能するものではありません。
語られ続けているかどうかで、生きた言葉になるかが決まります。
形骸化している組織では、
行動指針は「最初に説明されたきり」の存在です。
新人研修で一度聞き、あとは壁や資料の中で眠り続ける。
これでは、共通言語になるはずがありません。
行動指針は“説明されるもの”ではなく“使われるもの”
行動指針を説明すること自体は、難しくありません。
しかし、説明された言葉と、使われる言葉は別物です。
使われる行動指針とは、
- 会話の中で自然に出てくる
- 判断の理由として参照される
- 「行動指針的にはどうか?」と問い直される
こうした状態にある言葉です。
つまり、行動指針が機能するかどうかは、
理解されたかではなく、会話に登場しているかで判断できます。
会議・OJT・評価で言葉が循環しているか
行動指針が共通言語になっている組織では、
特別な場でなく、日常のやり取りの中で使われています。
- 会議で意思決定の理由として出てくる
- OJTで「この判断は行動指針のどこに当たるか」を確認する
- 評価面談で結果ではなく判断プロセスが語られる
ここで重要なのは、
正解を当てることではなく、言葉に触れる回数です。
繰り返し語られることで、
行動指針は「覚えるもの」から
「考えるときに自然に浮かぶもの」に変わっていきます。
行動指針が出てこない組織の会話構造
一方、行動指針が形骸化している組織では、
会話の中にその言葉が一切出てきません。
代わりに使われるのは、
- 前例
- 上司の好み
- 暗黙の空気
こうした非公式な基準です。
その結果、
判断理由は共有されず、
「なぜその判断になったのか」がブラックボックス化します。
行動指針が語られない組織では、
共通言語が存在せず、
属人的な判断が積み重なっていきます。
共通言語になる組織で起きていること
行動指針が語られる組織では、
次のような変化が起きています。
- 判断のズレが早い段階で修正される
- 新人でも判断の理由を説明できる
- 「それは行動指針的にどうか?」という問いが歓迎される
ここでは、行動指針は
“守らせる言葉”ではありません。
一緒に考えるための言葉として、
組織の中を循環しています。
条件③:行動指針が「感情と結びついているか」
行動指針が正しくても、人が動かない最大の理由はシンプルです。
人は「正しさ」では動かないからです。
論理的に理解できても、
感情が動かなければ、行動は変わりません。
これは意識の問題ではなく、人間の仕組みそのものです。
人は正しさでは動かない
行動指針が形骸化している組織ほど、
「ちゃんと説明すればわかるはずだ」と考えがちです。
しかし実際には、
- 頭では理解している
- 内容には同意している
- でも、判断の場面では使われない
という状態が起きています。
これは社員が怠慢なのではありません。
行動指針が感情を伴っていない言葉だからです。
人は、
「正しいから」ではなく、
「しっくりくるから」「納得できるから」動きます。
言葉が記憶に残る/残らない分岐点
同じ言葉でも、
すぐに忘れられるものと、
ふとした瞬間に思い出されるものがあります。
その分岐点は、
感情を伴っているかどうかです。
- 悔しかった経験
- 誇らしかった瞬間
- 救われた出来事
こうした感情と結びついた言葉は、
時間が経っても消えません。
行動指針も同じです。
感情と接続されていない言葉は、知識として処理され、やがて忘れられます。
体験・物語・空気が行動指針を生きた言葉にする
行動指針が「生きた言葉」になる組織では、
必ず体験や物語がセットで共有されています。
- この判断をしたとき、何が起きたか
- なぜあの選択を誇りに思っているのか
- その行動が誰を救ったのか
こうした具体的な物語があると、
行動指針は単なるスローガンではなく、
自分の行動と結びついた意味になります。
また、会議や現場の空気も重要です。
行動指針に沿った判断が尊重される空気があるかどうか。
それ自体が、言葉に感情を与えます。
音楽・儀式・共通体験が果たす役割
感情と結びつける方法は、言葉だけではありません。
- 同じ音楽を聴く
- 同じ場で同じ体験をする
- 繰り返される小さな儀式がある
こうした共通体験は、
行動指針を空気として共有する装置になります。
音楽や儀式は、
説明しなくても感情をそろえ、
「この会社らしさ」を思い出させます。
行動指針を覚えさせるのではなく、
感じさせる。
ここまで設計されて初めて、
行動指針は現場の共通言語になります。
行動指針が“現場の共通言語”になった組織の変化
行動指針が「掲げられている言葉」から
「現場で使われる共通言語」に変わったとき、
組織の動き方ははっきりと変わります。
それは意識改革のような劇的な変化ではなく、
日々の判断や会話が、静かに、しかし確実に揃っていく変化です。
指示が減り、判断がそろい始める
行動指針が共通言語になると、
まず起きるのは指示の減少です。
上司が細かく説明しなくても、
「この場面なら、あの行動指針だよね」と
判断の方向性が自然に共有されるようになります。
結果として、
- 判断スピードが上がる
- 確認や差し戻しが減る
- 現場で止まらなくなる
といった変化が起きます。
これは裁量を放り投げている状態ではありません。
判断の軸が共有されているから、任せられる状態です。
新人・若手の立ち上がりが早くなる理由
行動指針が機能している組織では、
新人や若手の立ち上がりが驚くほど早くなります。
理由はシンプルです。
「何をすれば評価されるのか」が明確だからです。
結果だけでなく、
- どう判断したか
- なぜその行動を選んだか
が言葉として共有されているため、
新人は安心して行動できます。
迷ったときに、
「行動指針に照らすとどうか」を考えられる。
この状態があるだけで、
若手の不安と手待ちは大きく減ります。
評価・育成・採用まで波及する効果
行動指針が共通言語になると、
評価や育成の場面でも変化が起きます。
- 評価が結果論だけにならない
- 育成が属人的な指導にならない
- 採用で「合う/合わない」が説明できる
評価は、
「できた・できなかった」ではなく、
どう判断し、どう行動したかを見るものに変わります。
その結果、
行動指針は「縛る言葉」ではなく、
育てる言葉になります。
診断士視点:行動指針が機能している組織の共通点
診断士として現場を見てきて、
行動指針が本当に機能している組織には、
明確な共通点があります。
- 判断理由が言葉で説明されている
- 行動指針を引き合いに出すことが歓迎される
- 結果よりもプロセスが会話されている
ここでは、行動指針は
「守らせるためのルール」ではありません。
一緒に考えるための共通言語として、
組織の中を循環しています。
行動指針が共通言語になると、
組織はブレにくくなり、
人が入れ替わっても文化が残ります。
まとめ|行動指針は「掲げるもの」ではなく「使われるもの」
行動指針が形骸化してしまうとき、
つい「言葉が悪いのではないか」「もっとわかりやすく書き直そう」と考えがちです。
しかし本当の原因は、
言葉そのものではありません。
行動指針が
- 判断に使われていない
- 会話に出てこない
- 感情と結びついていない
この設計不在こそが、形骸化を生んでいます。
行動指針は、掲げた瞬間に機能するものではありません。
判断の言葉に翻訳され、
日常の会話で使われ、
体験や感情と結びついて初めて、現場の言語になります。
つまり、行動指針は
設計すれば、使われる言葉になる。
覚えさせる必要はありません。
使われる構造をつくれば、自然と定着します。
共通言語を持つ組織は、強い。
判断がそろい、行動がブレず、
人が入れ替わっても文化が残ります。
行動指針は、
理想を飾るためのスローガンではなく、
現場を動かすための道具です。
壁に貼るだけで終わらせず、
「使われているか」という視点で、
自社の行動指針を見直してみてください。
そこから、組織は静かに、しかし確実に変わり始めます。


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