
みなさんこんにちは!ソングメーカー代表、そしてよさこい楽曲制作者の井村淳也と申します。
今回は、今までの私の音楽制作の歩みを振り返った、ひとつの区切りとなるような記事を書いてみたいと思います。
そこにはよさこい楽曲への想いと、これまでの取り組みやこだわり、また今後の制作においての決意が多く込められた内容となっており、とても長い記事になると考えております。
是非、多くの方にお読みいただきたい。そんな思いで書いてみました。
よさこいを、そして音楽を愛する人に届いてほしい、そんな願いも込めております。
どうか、この記事に少しでもお時間を割いて頂ければ幸いです。
今こそ知りたいよさこい楽曲制作の魅力と意義
よさこいとの出会いが音楽制作に与えた衝撃
私が音楽制作で独立したのは2008年。当初はさまざまな用途の楽曲を依頼ベースで手がけていました。企業のPRソングから個人のお祝いソング、学校や地域のイベント曲など、ジャンルや目的を問わず、あらゆる想いを曲にすることに夢中でした。
- 企業のPRソング
- 個人のお祝いソング
- 学校や地域のイベント曲
そんな中、あるよさこいチームから「うちのオリジナル曲をつくってほしい」という問い合わせが届いたのがすべての始まりでした。深い知識はありませんでしたが、「このチームらしさを音にしてほしい」という熱量ある想いに心を打たれ、よさこい世界への一歩を踏み出しました。
1200曲制作実績から見えたよさこい楽曲の特別な価値
これまでに1200曲以上の楽曲制作に携わってきました。その中にはYouTubeで多くの再生を獲得した楽曲や、結婚式のためだけに生まれた世界に一つだけの曲もあります。数あるジャンルの中でよさこい楽曲は、“届け方の難しさ”と“込められる熱量の深さ”において独特な特徴を持っていると感じます。
よさこい楽曲がチームを育む共創プロセス
よさこいチームは単なるダンス集団ではなく、老若男女が集い、地域を越えて支え合いながら踊り続けるコミュニティです。その中心にあるのが一年間踊り続けるための楽曲。
チーム代表や振付担当、衣装担当など、各担当者が「この曲にどう思いを込めるか」を真剣に考えます。曲づくりの熱量が少しでもズレると、踊りや表情にも影響が出るため、制作者にはチーム文化の理解と振付・構成の動線を想像する力が求められます。このプロセスは単なる楽曲制作を超え、まさに“共創”と呼べるものです。
今だから語るよさこい楽曲制作の型と成功の秘訣
全国各地のチームと試行錯誤を重ねる中で、「よさこい楽曲を作るとはどういうことか」「依頼側と制作側がどう関わると良いか」という制作の“型”が見えてきました。完璧な答えではありませんが、この場で共有することで、オリジナル曲制作の成功率を高められると確信しています。
オリジナルよさこい曲を探すチームへのメッセージ
「自分たちのチームに、本当に合った曲を探している」「市販の曲では物足りない。でもオリジナル制作には不安がある」というチームの皆さんへ、制作依頼時に押さえておきたいポイントをまとめました。
- チームの歴史やビジョンを明確に伝える
- 希望する踊りや演出イメージを具体化する
- リハーサルや振付との連携プランを共有する
- 制作過程でのフィードバックを密に行う
10年以上前のよさこい楽曲初制作体験
私が初めて「よさこい楽曲」を制作したのは、今から10年以上前のことです。依頼してくださったのは、特別な知名度はない地方都市の市民チーム。当時は地域のお祭りに年1回参加するだけのごく普通のチームでした。
ですが、そのチームから届いた「自分たちの想いを“曲”にしたいんです。」というメールは、今でも忘れられません。その一文に私は不思議な力を感じ、一歩を踏み出しました。
よさこい楽曲完成の秘訣 踊りと演舞の融合
数十曲のオーダーメイド楽曲制作経験があった私は、当初「聴かせるための曲作り」に自信を持っていました。しかしよさこい楽曲は「踊るために存在」します。
振付、チームの思想、代表の夢、衣装の世界観などが統合された「ひとつの演舞」として完成するためには、全体像の理解が不可欠でした。
よさこい楽曲制作の要望調整と想いの対話
初回のやりとりは難航しました。聞き慣れないよさこい用語や細かな指定が次々に出てきたからです。
- 和の雰囲気は欲しいけど、ベタすぎないで
- メンバーは学生も社会人も混在していて、踊りのレベルもバラバラ
- 1分半はスローでしっとり、2分目からガラッとテンポを上げたい
その中で気づいたのは、彼らの要望すべてに誇りと理想、そして夢が込められていたこと。この曲はお祭りのBGMではなく、1年間の汗と涙を象徴する人生そのものだったのです。
初制作よさこい楽曲の構成と演舞プラン
完成した初めてのよさこい楽曲は、4分少々のフルサイズ構成でした。
- 静かな和笛から始まり
- 徐々にテンポアップ
- 中盤にストリングスと和太鼓のソロ
- 後半は全員が動き出すクライマックスへ
チームのカラーと提案を織り交ぜ、演舞としての流れを意識。初披露の動画を見て、私は涙しました。
「ありがとう。メンバー全員が、この曲に恋をしました」という代表からのメールは、今でも宝物です。
よさこい楽曲制作が教える本質と概念再定義
この1曲目が教えてくれたのは、楽曲制作とは「音」や「言葉」の表現にとどまらず、届け方の本質まで見据えることだということです。
- 踊る人の表情
- 見ている観客の拍手
- 1年間の練習で積み重ねた時間
- 曲を流した瞬間の空気の変化
これらすべてが楽曲の一部となります。無形の価値を形にするためには、「どう届くか」「どう使われるか」まで想像する力が必要だと、身をもって学びました。
今でも印象に残るよさこい楽曲制作のチームエピソード
よさこい楽曲の制作に携わってから、実に様々なチームと出会ってきました。個性豊かで、時に悩みを抱え、時に奇跡のような一体感を見せる。そんな彼らと向き合ってきた中で、どうしても忘れられない、あるチームとのエピソードがあります。
よさこい楽曲で変革を目指した地方都市中規模チームの葛藤
そのチームは、地方都市の中規模チームでした。地元ではそれなりに知られていて、10年以上の歴史もある。ただ、ここ数年はパッとしない。大会での評価も伸び悩み、メンバーのモチベーションも低下気味。そんな中、代表の方から連絡をいただいたのです。
「今年は、何かを変えたいんです。曲から、変えたい。」
そう言ってくださった代表の声には、焦りと希望が同居していました。
ヒアリングを重ねてわかったのは、「惰性で続いている空気」をなんとか打破したいという、強い決意。けれど、同時にこうも言われました。
「実は、過去の曲を作った方が、今もチームに関わっていて……」
つまり、これまでのやり方を大きく変えるには、しがらみや遠慮がつきまとう。変えたい。でも、変えきれない。そんな葛藤を抱えた状態でのスタートでした。
対話を重視したヒアリングで浮かび上がったチームの本音
私はすぐに、楽曲の方向性やアレンジ案を提示するようなことはしませんでした。
代わりに、徹底して「話を聴く」ことに徹しました。代表だけでなく、複数のメンバーにもZoomで話を伺い、それぞれが感じている課題や希望、不安を丁寧に拾っていきました。
すると、いくつかの“共通点”が見えてきました。
メンバーは変化を望んでいるが、口には出せない
過去のやり方を否定する空気が怖い
本当はもっと、自分たちの「色」を出したい
このチームが必要としていたのは、単なる“新しい曲”ではありませんでした。自分たちの本音や葛藤を、誰かに聴いてもらい、汲み取ってもらい、そして形にしてもらう──そんな“翻訳者”のような存在だったのです。
覚悟を象徴する楽曲構成の決断ポイント
曲の方向性が定まったのは、最初のやりとりから1ヶ月ほど経った頃でした。
最終的に選ばれたのは、「過去の流れを断ち切る」ことを明確に示すような構成。冒頭にナレーションと静寂を挟み、メッセージ性を重視した展開。過去の曲と明らかに異なるスタイルです。
正直、内部での賛否はあったと聞いています。「こんなの、うちのチームらしくない」という声もあったそうです。でも、それでも代表は、腹をくくって決断してくれました。
「今年がダメなら、もう潮時だと思ってた。でも、みんなと話して“まだ終わりたくない”と思えたから。」
この言葉に、私も応えたくなりました。
初披露で歓声に変わった“変わる覚悟”の瞬間
迎えた本番当日。
そのチームは、かつてないほどの表情と熱量で演舞を披露しました。観客の歓声、審査員の驚いたような顔、そしてなにより──メンバーたちの「やりきった笑顔」。
後日、代表からこうメールをもらいました。
「あの曲に、あの日のすべてが詰まってました。チームを変える勇気をくれて、本当にありがとう。」
この言葉を読んだとき、私は一人の楽曲制作者というよりも、チームの一員になれたような気がしました。
よさこい楽曲が果たす過去と未来を繋ぐ役割
このエピソードを通じて私が学んだのは、「よさこい曲」というのは、単なる音楽ではなく、
惰性を断ち切るための“号砲”であり、
新たなフェーズに踏み出す“旗印”であり、
仲間の想いをひとつに束ねる“橋”であるということ。
ときに、代表の“覚悟”が問われることもあります。
ときに、過去を乗り越えるための痛みを伴うこともあります。
でも、その先にしか見えない風景が、必ずあるのです。
繰り返し制作で見えたよさこい楽曲の本質
聴かせる音楽と踊らせる音楽の決定的な違い
よさこい楽曲を手がける中で、私はある明確な境界線に気づかされるようになりました。
それは、「市販曲」と「オリジナル曲」の違いではありません。もっと言えば、「聴かせる音楽」と「踊らせる音楽」の違いです。
音楽を“聴く”側の文化と、“踊る”側の文化では、求められる構造も熱量もまるで違います。市販曲は、音楽単体での完結性を重視します。Aメロ・Bメロ・サビという構造、印象的な歌詞、耳に残るメロディ。それらを通して“楽曲としての完成度”を高めていくスタイルです。
一方、よさこい楽曲には別の要件が課せられます。
それは「振付」との連動性です。
市販曲であれば、まず楽曲があり、後に振付が生まれるという順序が一般的です。けれど、よさこいの現場ではしばしば逆のアプローチが求められます。
すでに構想された演舞の流れ、魅せ場のタイミング、フォーメーションの転換──
それらの設計をあらかじめ共有していただいたうえで、音楽がそれを“演出する側”として作られていくのです。
踊りの構成が最初から完全に出来上がっているわけではなくても、おおよその流れというものがイメージとして既にあり、そこに後から音楽をあてはめていくというケースです。
振付連動による楽曲構成の高度要求
これは制作者側からすれば、非常に高度な要求でもあります。
たとえば「1分45秒の地点で一気に盛り上げてほしい」と言われれば、そこに向かって全体の構成を調整する必要があります。
しかも、その盛り上がりが単なる音量の上昇やBPMの加速ではなく、「演舞の見せ場」を最大限に引き立てるものでなければなりません。
衣装と演出を融合させる音響演出
さらに衣装の存在も無視できません。
とくに女性中心のチームでは、衣装替えのタイミングに合わせて音のテンポや空気感を変える必要があります。あるチームでは、「衣装替えで羽織を脱ぐ瞬間に、音が“風を切る”ような音に変わると嬉しい」と言われたことがありました。
その時、私はその数秒のためだけに、実際に布が風を切る音を録音し、そこに特殊加工を施して、曲に組み込んだのです。
こうした対応は、普通の音楽制作ではなかなか求められません。
しかし、よさこい楽曲では「チームの思想」や「構成のドラマ」を、音楽がどう補完し、高められるかが本質になります。
チームの物語を音楽で描く表現設計
よさこいの演舞とは、チームの物語そのものです。
だから私は、チームが大切にしている価値観やテーマをできる限りヒアリングするようにしています。
「今年のテーマは“飛翔”です」と言われたなら、単に鳥の鳴き声を入れるだけでは終わりません。
飛翔という言葉が象徴する“願い”や“挑戦”が、音の中でどう立ち上がるか。
それを考えるのが、私の役割だと考えています。
音楽制作がチームづくりにつながる理由
そしてもうひとつ──
私が強く感じているのは、「曲づくりは、チームづくりの一環である」ということです。
単に音楽を提供するだけなら、汎用的なものを使っても成立するかもしれません。
でも、その音楽に命を吹き込むのは、踊る人たちです。
彼らが自分たちのために生まれた音楽を感じられた時、表現力は格段に変わります。
逆に言えば、演者に届かない曲は、いくら完成度が高くても“ただのBGM”になってしまう。
だから私は、「この音は、誰のために鳴るのか?」という問いを、常に持ち続けながら制作に向き合っています。
よさこい楽曲は、単なる商品ではありません。
それは「表現の設計」であり、「チームの意志表明」であり、ある意味「戦いのための装備」です。
その本質に気づいてから、私はひとつとして同じアプローチをしていません。
そのチームにとっての“最適解”はなにか──
毎回ゼロから問い直しながら、音を編み出していく。
それが、私の考える「よさこい楽曲の本質」です。
よさこい楽曲制作における型とチームごとのオリジナル答え
伝統的なよさこい楽曲の構成パターン
よさこいの世界には、確かに「型」が存在します。
イントロがあって、リズムが高まり、掛け声や転調があって……踊りの流れや展開に合わせた「あるべき構成」が、これまでの蓄積の中で自然と形成されてきた。そこにはある種の“お約束”があり、制作者としても当然それを意識して制作に臨みます。
たとえば、多くの楽曲では「前半:和風」「後半:アップテンポで盛り上がる」「鳴子を活かすパート」「隊列を活かしたユニゾンパート」「ボーカルあり/なしの判断」といった構成上の定番が存在します。
けれど、私はそれを「縛り」だとは思っていません。
むしろ、“懐の深さ”こそが、よさこい楽曲の本質ではないかとさえ感じているのです。
多様なスタイルで広がるオリジナル答え
実際、これまでに私が制作してきた楽曲の中には、
最初から最後までロック調で押し切るチーム
民謡や盆踊りを大胆に取り入れたチーム
EDM要素を軸に、未来的な世界観を表現するチーム
ひとつの物語を芝居のように語るチーム
一切ボーカルを入れず、鳴子と楽器音だけで魅せるチーム
──など、多種多様なスタイルがありました。
そして、どの楽曲にも共通しているのは、「そのチームにとっての“答え”」を探した結果だということです。
つまり、“正解”は存在しないのです。
型を超えるオーダーメイド制作プロセス
「よさこいらしい曲」と言っても、チームによってそのイメージは全く異なります。
「力強さ」なのか、「美しさ」なのか、「熱狂」なのか、「誇り」なのか。
何を最も表現したいのかによって、選ぶべき音楽のスタイルは変わってきます。
だからこそ、私は「よさこい楽曲は、チームとの対話からすべてが始まる」と考えています。
形式やジャンルに合わせて“曲をあてがう”のではなく、まずはチームの話をじっくりと聞く。
どんなコンセプトなのか、どんな踊りを想定しているのか、どんなイメージを伝えたいのか──
そういった情報をもとに、「そのチームにしかない楽曲」をゼロから創っていく。
いわば、オーダーメイドのものづくりです。
同じ「和風ロック調」と一言で言っても、構成や音色、テンポ、メロディのライン次第で印象はまったく変わります。
一人ひとりの表情が見えるような静かな出だしから始まり、最後に大団円を迎えるストーリー展開。
重厚な和太鼓のリズムで観客を引き込む、圧のあるオープニング。
西洋のクラシックを取り入れた壮麗な構成で、異国の雰囲気をまとう作品。
どれも、「このチームだからこそできる」ものばかりでした。
型を活かしつつ無限の可能性を追求
楽曲の構造には「型」があるかもしれません。
でも、それをどう“着こなす”かは、チームごとに異なる。
まさに、型を活かしながら型に縛られない。それが、よさこい楽曲の面白さだと感じています。
そして、だからこそ私は、毎回の制作が楽しくて仕方ないのです。
「次は、どんなチームと、どんな答えを一緒に見つけられるだろう」と思うと、ワクワクが止まりません。
制作者として、これほどやりがいのある領域はそうそうありません。
あなたのチームの“答え”は、まだこの世に存在していません。
だからこそ、一緒に探しに行きましょう。
その対話からしか、生まれない音があります。
制作者が鍵を握る よさこい楽曲は人で決まる
制作姿勢がチームの未来を描く共創プロセス
よさこいの楽曲づくりは、決して“音”だけで完結するものではありません。その曲がどれだけ高品質で、感動的で、完成度の高いものであったとしても──そこに「誰のために」「どんな想いで」作られたのかという背景がなければ、踊る人の心を動かすことはできません。そして、見ている人の心にも届きません。
結局のところ、よさこい楽曲の出来を左右するのは──「誰が作るか」なのです。
井村淳也という制作者の姿勢
私は、ただ曲を“作る人”ではありません。「一緒にチームの未来を描く人」でありたいと、いつも思っています。
オーダーメイドで楽曲を作るというスタイルは、ある意味、当たり前のように聞こえるかもしれません。けれどその実態は、チームのこれまでの歩みを丁寧に聞き取り、その中で今どんな変化の時期にいるのか、次に何を目指そうとしているのか──そういったことを、何層にもわたる対話の中で掘り下げていくプロセスです。
曲を作ることは、「答えを出すこと」ではなく、むしろ一緒に問いを深めていくこと。そのプロセスに真摯に向き合える人かどうか──それが、よさこい楽曲の本当の価値を左右するのだと私は信じています。
チームの代表とだけでなく、振付を担当する方、衣装を仕立てる方、MCの言葉を紡ぐ方、音響や照明を担う方……その一つひとつの要素が「楽曲」と連動し、呼応し、全体としての“世界観”が立ち上がるのが、よさこいの奥深さです。
だからこそ、私は「楽曲制作者」という枠にとどまらず、チームの一員として並走する覚悟を持って臨んでいます。
制作者とチームの関係が作品を決める
私自身、これまで17年間、さまざまなチームとご一緒してきました。その中で強く実感するのは──よさこいにおける楽曲は、「発注物」ではないということ。
もちろん、金銭的な対価が発生する以上、ビジネスとしてのやり取りであることに変わりはありません。ですが、それ以上に「魂のやり取り」が存在するのが、よさこいの世界だと思うのです。
・今年はコロナ禍を経て初めてのリアル演舞だから、思いっきり笑顔が弾けるような明るい曲にしたい
・中高生中心のチームなので、テンポ感のあるポップロックで、若さを前面に出したい
・チームとしての10周年を迎える節目なので、これまでの歩みを歌詞に込めたい
──こういった想いを、時に数時間にわたって聞き取りながら、一音一音を紡いでいきます。
その中で、代表の方がふと漏らした「実は、今年で最後にしようと思っていたんです」という言葉が、楽曲の方向性を大きく変えたこともあります。
逆に、これまで表に出てこなかったチームの「影の主役」を、楽曲に登場させたことで、チーム全体の結束が高まったこともありました。
楽曲とは、想いの器です。
それをどう形にするかは、誰がどれだけ「チームに心を寄せられるか」にかかっています。
よさこいは、単なるエンタメではありません。人の人生や、生き方さえも映し出すステージだと私は思います。だからこそ、楽曲制作者は単なる“音屋さん”ではなく、その人生を受け止める覚悟を持った人である必要があるのです。
あなたのチームだけの“答え”を探すよさこい楽曲制作
正解を持たずに始める、寄り添いの制作スタイル
よさこいの楽曲制作において、私が一貫して大切にしている姿勢があります。それは、「答えを最初から持っていない」ことを、恐れずに認めることです。
依頼された瞬間に「こういう曲ですね」と即答することは簡単です。和風でアップテンポ、鳴子のリズムを活かして、サビに掛け声を入れる。たしかに、よさこい楽曲の“型”として一定の文法やセオリーは存在します。でも、それはあくまで“型”にすぎません。本当に大切なのは、そのチームだけの“答え”を見つけること。私は、それを一緒に探す旅に出るような気持ちで、毎回の制作に臨んでいます。
実際の制作では、最初の打ち合わせから始まる「寄り添い」の時間がとても重要です。どんなチームなのか、どういう思いで踊っているのか。メンバーの構成や年代、地域との関わり、ステージで伝えたいこと、テーマやメッセージ──そういったものを、できるだけ言葉にして受け取るようにしています。そして、その言葉にならない空気や雰囲気まで、感じ取れるよう心を澄ませます。
チームの想いを翻訳する音楽づくり
たとえば、「祭りを盛り上げたい」という目的のチームもあれば、「メンバーにとっての生きがいにしたい」「地元に感謝を届けたい」「障がいを持つ子どもたちが活躍できる場にしたい」など、よさこいを通じて表現したい想いはチームごとにまったく異なります。だからこそ、最初から“これが正解”という音楽を持っていくことはできない。むしろ、その想いを受け止め、言語化し、曲という形に翻訳していくことが、私の役割だと思っています。
| チームの目的 | 楽曲の方向性 |
|---|---|
| 祭りを盛り上げたい | 明るく華やかな構成で観客を巻き込む |
| 生きがいとして踊りたい | 心に響くメロディと温かいリズム |
| 地元への感謝を届けたい | 地域の音や言葉を取り入れた構成 |
| 障がいを持つ子どもたちの活躍の場に | 誰もが踊れるテンポと包容力ある音設計 |
もちろん、すぐに答えが見えることもあれば、時間をかけて深掘っていくことが必要なケースもあります。でも、その過程こそが価値であり、楽曲という最終アウトプットの説得力にもつながっていきます。寄り添い、深掘り、そして対話を重ねることで、“そのチームだからこそ生まれる音”が立ち上がってくるのです。
一言がすべてを変える、制作の出発点
時には、打ち合わせで出てきた一言が、曲のすべての出発点になることもあります。「自分たちはまだまだ挑戦中のチームなんです」という言葉から始まった楽曲は、未完成であることを逆手にとった構成で、「進行形の物語」として仕上げました。また、「よさこいを通じて、もう一度人生を始めたい」と語った代表の言葉から生まれた楽曲は、過去を背負いつつも前を向く、大人の哀愁と希望を織り交ぜた一曲になりました。
私は制作者であると同時に、対話の相手であり、言葉にできない想いの通訳でもありたいと思っています。そして、そうやって生まれた一曲が、メンバー全員の心の支えになるような、そんな音楽であってほしいと願っています。
“わからない”から始まる、共に歩む制作の価値
だから、もしあなたが「どんな曲にすればいいのか、まだわからない」と思っていても大丈夫です。その“わからない”を一緒に抱えて、少しずつ“わかっていく”過程をともに歩めること。それこそが、オーダーメイドで楽曲をつくる意味であり、私がよさこい制作を続けてきた理由の一つです。
チームの誰かのためにではなく、チーム全体のために。目立つためではなく、心から鳴子を鳴らすために。そのための“答え”を、私と一緒に探しに行きませんか。
最後に──私が17年間、曲づくりを続けてきた理由
「ソングメーカー」という事業で、私はこれまでに1200曲以上、そしてよさこいは555曲以上の楽曲を制作してきました。気がつけば17年──ここまで続けてこられたのは、間違いなく、音楽を“誰かのために”つくることが、私にとって何よりの喜びだったからです。
その“誰か”は、時に一人の誕生日のためのオーダーであり、企業の理念を伝える社歌であり、あるいは、一生に一度のプロポーズソングであったりもしました。そして、よさこいの楽曲制作は、そんな「誰かの想い」をカタチにするという営みの中でも、とりわけチームという“集合体の魂”を音にする、特別な仕事です。
よさこいは「踊り」であると同時に、「物語」でもあります。曲がなければ始まらないし、曲がその物語の語り手になります。だから私は、音楽をただ「納品物」としてつくるのではなく、そのチームの物語を背負う「同伴者」として、最後まで一緒に走るつもりで向き合っています。
修正無制限。追加費用なし。後払い制。──これは、私のスタイルの一部ですが、本質ではありません。大切なのは、あなたと、あなたのチームを「信じて」いるということ。そして、あなたのチームが私の音楽を「信じて」踊ってくれる。その“信頼の循環”こそが、よさこい楽曲づくりの原動力であり、私がこの道を選び続ける理由なのです。
もし、あなたが「よさこい曲づくり」で迷っていたり、「ちゃんと想いを込めた一曲がほしい」と思っていたら、どうか気軽に声をかけてください。完成された答えではなく、共に見つけに行く制作を──私は、あなたのそばで、あなたの物語を音にする準備ができています。
心から、あなたのよさこいチームとの出会いを楽しみにしています。
井村 淳也



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