
皆さんこんにちは!ソングメーカー代表、井村淳也です。
よさこい大会で結果を残すチームには、振付や衣装、表現力だけでは説明しきれない「楽曲構成の強さ」があります。実際、演舞そのものの完成度が高くても、曲の流れや山場の作り方が弱いことで、審査員の印象に残りきらないケースは少なくありません。
私は17年間、1,200曲以上の音楽制作に携わる中で、よさこい楽曲についても数多くのご依頼をいただいてきました。その現場で何度も感じてきたのは、入賞するチームの曲には、構成の緩急、音の厚み、そして物語の運び方に共通点があるということです。
今回の記事では、そうした経験をもとに、よさこい大会入賞チームに共通する「楽曲構成」の絶対条件を整理していきます。これから新曲を作るチーム様はもちろん、今ある曲を見直したい方にも、きっとヒントになるはずです。
この記事を読むことで得られること
- よさこい大会で「良い曲」だけでは入賞につながらない理由と、評価を左右する楽曲構成の本質が整理できます
- 入賞チームに共通する構成の型、緩急設計、音の厚み、物語性といった要素を具体的に理解できます
- 自分たちの演舞に合った形で、どこを見直せば“記憶に残る一曲”に近づけるかの視点が得られます
まず結論:よさこい大会で結果を残す楽曲は、メロディの良し悪しだけではなく、緩急・厚み・物語性を備えた「構成設計」によって演舞全体の説得力を高めています。
なぜ「良い曲」でも入賞できないのか
完成度と評価は一致しない
よさこい楽曲の制作に長く携わっていると、「良い曲=必ず入賞する曲」ではないという現実を何度も目にします。メロディが整っている。アレンジも丁寧。振付との相性も悪くない。それでも大会では思ったほど評価が伸びない。そんなケースは決して珍しくありません。
一方で、技術的には飛び抜けて複雑ではなくても、強く印象に残り、観客や審査員の心をつかむ演舞があります。その差はどこにあるのか。私自身、長年の制作経験の中で繰り返し感じてきたのは、「完成度の高さ」と「評価される強さ」は、似ているようで別物だということです。
上手く作られているのに埋もれてしまうチームには、共通して「印象の残り方」が弱い傾向があります。悪くはない。でも、強く覚えられない。これは演舞全体に問題があるというより、楽曲が持つ構造の力が十分ではないことが多いのです。
審査は「体験」で決まる
大会で審査員が受け取っているのは、単なる音の情報ではありません。楽曲、振付、表情、隊形、空気感。そのすべてが一体となった「演舞体験」です。
つまり審査は、技術的な要素だけで機械的に決まるものではなく、最終的には「どう感じたか」が大きく影響します。見ている間に引き込まれたか。途中で気持ちが切れなかったか。終わった瞬間に余韻が残ったか。こうした感情の動きこそが、評価の土台になります。
だからこそ、いくら細部まで丁寧に作り込んでも、演舞全体としての体験設計が弱ければ、印象は伸びません。逆に言えば、構成に力がある曲は、観客や審査員の感情を自然に動かし、演舞そのものを一段強く見せてくれます。
構成が弱いと全てが弱く見える
楽曲構成は、単なる順番の話ではありません。どこで引き込み、どこで溜め、どこで解放し、最後に何を残すか。その流れの設計が、演舞全体の見え方を決めています。
構成が弱い曲では、せっかくの振付の見せ場も活きにくくなります。隊形変化があっても山場に見えない。盛り上がるはずのサビも伸びきらない。終盤に向けて熱量が上がっていくはずなのに、なぜか印象が平坦なまま終わってしまう。こうした現象は、振付や演出単体の問題ではなく、それらを支える土台としての構成が弱いことによって起きます。
逆に、構成がしっかりしている曲は、振付も演出も自然と強く見えます。見せたい場面がきちんと立ち上がり、感情の流れが生まれ、観る側の記憶にも残りやすくなるのです。
つまり、よさこい大会で結果を左右するのは、単なる「音の良し悪し」ではありません。構成こそが、楽曲・振付・演出のすべてを支える土台です。ここが弱ければ全体が弱く見え、ここが強ければ演舞全体の説得力が一気に高まります。
入賞チームに共通する「構成の黄金パターン」
約4分の基本構造(型)
よさこい楽曲の多くは、全体で約4分前後に収まります。この限られた時間の中で印象を残すためには、やみくもに盛り上げるのではなく、ある程度共通した基本構造を意識することが重要です。
私がこれまで多くの制作現場で見てきた中で、入賞チームに多いのは、次のような流れです。
- 導入:まず空気を作り、観客と審査員の意識を舞台に集中させる
- 展開:チームの個性やテーマを見せながら、少しずつ熱量を高めていく
- 転換:一度空気を切り替え、後半へ向けた「溜め」や新しい表情を作る
- クライマックス:全体の流れを回収し、最も強い印象を残して終える
この流れは、単に起承転結のような型にはめるという意味ではありません。重要なのは、観る側の感情が自然に動いていく順番を作ることです。導入だけが良くても弱い。最後だけ強くても足りない。約4分という短い時間の中で、無理なく熱量が上がっていく流れを持っていることが、強い楽曲の条件になります。
“山”の作り方は1つではない
よさこい楽曲を考えるとき、多くのチームが意識するのが「どこで一番盛り上げるか」です。ただし、ここで誤解してはいけないのは、山の作り方は一つではないということです。
大きく分けると、よくあるのは次の2つです。
- 一発型:後半に一気に最大ピークを持っていく構成
- 二段構え型:中盤に一度大きな山を作り、さらに終盤でもう一段上げる構成
一発型は分かりやすく、シンプルに強い構成です。特にテーマや演出が明快な場合は、一直線に頂点へ向かうことで迫力が出ます。
一方で、実際に強いチームに多いのは二段構えです。中盤で一度しっかり観客をつかみ、その後に転換や抜きを入れて、終盤でさらに大きなピークを作る。この構造があると、演舞全体に物語性が生まれ、審査員の記憶にも残りやすくなります。
つまり重要なのは、「盛り上がる場所を作ること」ではなく、どういう順番で感情を動かすかです。山を一つにするのか、二つにするのか。その選択自体が、チームの戦略になります。
「ピークの位置」で評価が変わる
同じように盛り上がる曲でも、評価に差が出る大きな理由の一つが、ピークの位置です。
これまでの制作経験から特に感じるのは、終盤の40〜60秒が非常に重要だということです。この時間帯に最も強いピークを置けている楽曲は、演舞全体の印象が格段に強くなります。
理由はシンプルです。大会では多くの演舞が続くため、審査員の記憶に残るのはどうしても最後の印象に引っ張られやすいからです。序盤や中盤が良くても、終盤が弱いと全体としての評価が伸びにくくなります。
逆に、終盤40〜60秒でしっかりピークを作り、そこからフィニッシュまで一気に駆け抜けられる曲は、「強かった」という印象を残しやすいです。ここで大切なのは、単純に音量を上げることではありません。そこまでに十分な展開と溜めがあり、「ここで来るべきものが来た」と感じさせられるかどうかです。
実務的に言えば、楽曲構成を考える際には、まず「最後の一番強いピークをどこに置くか」を先に決め、その上で逆算して導入・展開・転換を設計していくと、全体の流れがまとまりやすくなります。
入賞チームの楽曲は、このピークの位置が非常に明確です。盛り上がりの強さそのものよりも、どこに置き、どう積み上げたかが、最終的な評価を大きく左右しているのです。
緩急設計|“ずっと強い”は弱い
静と動のコントラスト
よさこい楽曲を考えるとき、つい「最初から最後まで勢いのある曲のほうが強い」と思われがちです。しかし実際には、ずっと強い曲は、途中から強く感じられなくなります。
人は同じ熱量が続くと、それを次第に“普通”として受け取るようになります。だからこそ、入賞チームの楽曲には必ずと言っていいほど、静と動のコントラストがあります。
ここで言う「静」とは、単に音が小さいという意味ではありません。音数を減らす、低音を一度引く、旋律を細くする、間を作る。そうした設計によって、観客や審査員の意識を一度リセットし、次の展開に向けた緊張感を作ることです。
つまり静寂には意味があります。静かな場面は“休み”ではなく、次の強さを強く感じさせるための準備です。
ここで必要なのが、抜く勇気です。盛り上がりを作りたいときほど、音を足したくなるものですが、実際には引いたほうが強く見える場面が多くあります。これは、長年制作してきた中で何度も実感してきたことです。
再点火の設計
緩急設計の中で特に重要なのが、中盤の扱いです。序盤からある程度熱量を作ったあと、どこで一度空気を切り替えるか。この中盤の落としどころが弱いと、曲全体が単調になりやすくなります。
落とすといっても、ただ勢いをなくせばよいわけではありません。大切なのは、再び引き込むための仕掛けを中に持たせることです。
たとえば、和楽器だけを残して空気感を変える。ベースやドラムを一度引いて、声や掛け声を強調する。あるいはコード感を少し変えて、観る側に「次はどうなるのか」と思わせる。こうした設計があると、中盤が単なる“つなぎ”ではなく、後半に向けての重要な踏み台になります。
現場でよくあるのは、「中盤で少し弱くなって、そのまま戻りきらない」というケースです。これは楽曲としてはもったいない状態です。落とした後に、どうやって再び火をつけるか。ここまで含めて構成を考えられている曲は、全体の完成度が一段上がります。
緩急が踊りを変える
緩急設計の効果は、観客の印象だけにとどまりません。実は一番大きく影響を受けるのは、踊り手の見え方です。
音楽にきちんと緩急があると、踊りの動きにも自然とメリハリが生まれます。強い場面ではキレが際立ち、静かな場面では溜めや表情が生きる。これによって、同じ振付でも見え方が大きく変わります。
現場で見ていて強く感じるのは、見せ場が際立つチームほど、音楽側にもきちんと準備があるということです。突然ジャンプしても強くは見えません。直前に音を引き、空気を張らせ、その上で一気に解放するからこそ、動きが大きく見えるのです。
つまり緩急は、楽曲のためだけのものではありません。踊りのキレを引き出し、見せ場を強化し、演舞全体の説得力を高めるための設計でもあります。
だからこそ私は、構成を考えるときに「どこで盛り上がるか」だけでなく、どこで引くか、どこで溜めるかを非常に重視しています。強い演舞は、強いところだけでできているわけではない。静かな瞬間や抜いた部分まで含めて、初めて強さが成立するのです。
「良い曲ではあるけれど、
自分たちの演舞にとって“勝てる構成”になっているのかは分からない」
そんな感覚があるなら、見直す価値は十分にあります。
音の厚み|“迫力”の正体
低音設計がすべてを支える
よさこい楽曲で「迫力がある」と感じるとき、その中心にあるのはメロディよりも低音設計です。実際、観客の身体感覚に直接届くのは、ベース、キック、和太鼓といった低音の層です。
ベースは楽曲全体の土台を作り、動きの芯を支えます。キックはその土台に明確な輪郭を与え、演舞に前へ進む推進力を生みます。そして和太鼓は、単なるリズムではなく、空気そのものを揺らすような存在感で、楽曲に和の重厚感を加えます。
この3つがしっかり噛み合っている曲は、音が薄くなりません。逆に、どれか一つが弱かったり、役割が曖昧だったりすると、全体の迫力も一気に下がってしまいます。よさこい楽曲の“強さ”は、こうした低音の支えの上に成り立っています。
厚み=音数ではない
ここでよくある誤解が、「音をたくさん重ねれば厚くなる」という考え方です。ですが、実際には厚み=音数ではありません。
音が増えすぎると、それぞれの役割がぼやけ、むしろ迫力は弱く聞こえることがあります。特に低音帯域は情報量が多いため、無計画に重ねると濁りやすく、グルーヴも失われやすくなります。
本当に厚みのある楽曲は、音を増やしているのではなく、配置・帯域・役割が整理されているのです。
- 配置:どの楽器を前に出し、どの楽器を支えに回すか
- 帯域:どの楽器がどの音域を担うか
- 役割:その音が何のために鳴っているのか
この3つが明確になると、音数が多くなくても十分に厚く、しかも抜けの良いサウンドになります。つまり、迫力とは「盛ること」ではなく、整理された強さを作ることなのです。
屋外で“痩せない音”とは
よさこい楽曲は、スタジオやPCスピーカーの中で完結する音楽ではありません。実際に鳴るのは、屋外のステージやパレード会場、大型スピーカーの前です。ここを前提に考えないと、どれだけ綺麗に作っても、本番で“痩せた音”になってしまいます。
私自身、17年間・1,200曲以上の制作を続ける中で何度も感じてきたのは、屋外で成立する音は、制作時点での感覚とは少し違うということです。部屋の中ではちょうど良く聞こえる音が、外では軽くなる。逆に、少しやりすぎかと思うくらいの低音設計が、会場ではちょうど良く感じられることもあります。
だから私は、よさこい楽曲を作るとき、単に「綺麗に聞こえるか」ではなく、屋外で鳴らしたときにどう届くかを常に意識しています。
例えば、
- ベースをただ太くするのではなく、輪郭が残るようにする
- キックが埋もれず、拍の芯として感じられるようにする
- 和太鼓が重すぎて濁らないよう、場面ごとに役割を整理する
こうした調整の積み重ねによって、初めて屋外でも痩せない音になります。
よさこいの迫力は、単に大きな音では生まれません。会場で鳴ったときに、観客の身体に届き、踊り手の動きを支え、演舞全体を大きく見せる。その状態を作れてこそ、本当の意味で「厚みのある音」だと私は考えています。
物語性|なぜ記憶に残るのか
テーマは説明しない
入賞するよさこい楽曲には、技術や迫力だけではない「物語性」があります。ここで大切なのは、テーマを言葉で説明しすぎないことです。
もちろん、チームとして伝えたい思いや背景は重要です。ですが、それをそのまま文章のように並べてしまうと、楽曲は一気に説明的になります。観客や審査員の心に残る曲は、テーマを“理解させる”のではなく、体験させるように設計されています。
例えば、静かな導入で空気を整え、少しずつ熱量を高めていくことで、「これから何かが始まる」という感覚を自然に生み出す。あるいは中盤で一度空気を変え、後半で一気に解放することで、物語が進んでいくような感覚を作る。こうした構成によって、観る側は説明されなくても、そのチームが何を見せたいのかを感じ取ります。
よさこい楽曲における物語性とは、歌詞やタイトルで語ることだけではありません。音の流れそのものが、観る側を世界観の中へ連れていくこと。それが、本当に強い物語性だと私は考えています。
感情の流れを作る
よく「起承転結のある曲が大事」と言われます。もちろんそれ自体は間違いではありません。ただ、実際の制作現場でより重要だと感じるのは、形式としての起承転結よりも、感情がどう動いていくかです。
観客や審査員は、構成を理屈で分解しながら聴いているわけではありません。今、緊張しているのか。引き込まれているのか。少し息をついているのか。最後に高揚しているのか。そうした感情の流れとして演舞を受け取っています。
だからこそ大切なのは、「ここがAメロ」「ここがサビ」と区切ることではなく、楽曲全体を通してどの順番で感情を動かすのかを設計することです。
例えば、最初に緊張感を作り、序盤で期待を高め、中盤で一度気持ちを引き締め直し、終盤で一気に解放する。この流れが自然に作れている曲は、観る側に無理なく入り込んでもらえます。逆に、場面ごとの強さはあっても感情の流れがつながっていないと、部分的には良くても全体として記憶に残りにくくなります。
つまり物語性とは、出来事を並べることではなく、感情を運ぶことです。ここが設計できている楽曲は、演舞全体の説得力がまるで変わってきます。
最後の30秒で全てが決まる
物語性を考える上で、最も重要な時間帯の一つが最後の30秒です。ここで何を残すかによって、演舞全体の印象は大きく変わります。
大会では多くのチームが続けて演舞するため、審査員の記憶にはどうしても最後の印象が強く残ります。序盤や中盤がどれだけ良くても、終わり方が弱いと、全体の評価まで薄く見えてしまうことがあります。
この最後の30秒で必要なのは、大きく分けて二つです。
- 余韻:演舞が終わったあとも感情が残る状態
- 決め:しっかり締め切り、「ここが終着点だった」と感じさせる強さ
どちらが正解というわけではありません。チームのテーマや演舞の方向性によって、余韻を残す終わり方が合う場合もあれば、最後に強く決め切るほうが合う場合もあります。
ただ一つ共通して言えるのは、終わり方が曖昧な曲は記憶に残りにくいということです。最後の30秒は、単なるラストスパートではありません。演舞全体の意味を回収する時間です。
観客や審査員は、その最後の感情を持ったまま次の演舞へ進みます。だからこそ、この30秒で何を残すか。ここまで含めて設計できている曲が、強く記憶に残るのです。
よくある失敗パターン
全部盛りで弱くなる
よさこい楽曲で意外と多いのが、「良い要素を全部入れた結果、かえって弱くなる」というケースです。
和太鼓も入れたい。琴も尺八も使いたい。盛り上がるサビも欲しい。中盤には静かな場面も入れたい。さらに転調もしたい。こうした要素は一つひとつ見ると魅力的なのですが、整理されないまま詰め込まれると、曲全体の焦点がぼやけてしまいます。
現場でもよくあるのが、どの場面も「見せ場っぽい」のに、結果としてどこも強く印象に残らないという状態です。これは、要素そのものが悪いのではなく、役割分担ができていないことが原因です。
本当に強い楽曲は、足し算だけで作られていません。どこを主役にして、どこはあえて引くのか。何を前に出し、何を支えに回すのか。そうした整理があるからこそ、一つひとつの見せ場が際立ちます。
「盛りだくさん」なのに印象が弱い曲は、実は少なくありません。だからこそ、全部を入れるのではなく、何を残し、何を削るかという視点が重要になります。
山が早すぎる
もう一つよくあるのが、一番大きな山場が早い段階で来てしまうパターンです。
序盤で大きな盛り上がりを作ること自体は悪くありません。むしろ最初に観客をつかむためには、ある程度の勢いが必要です。ただ、その時点で楽曲のピークを使い切ってしまうと、その後の展開が苦しくなります。
制作現場でも、途中音源を聴いた段階では「最初すごく強いですね」と感じるのに、最後まで通してみると、後半がどうしても伸びきらない。そんなケースがあります。これは、山そのものが弱いのではなく、ピークの位置が早すぎるために、後半へ向かう伸びしろが残っていないのです。
特に大会用の演舞では、終盤に向けて熱量を高めていく流れが重要です。序盤の強さはあくまで“つかみ”であり、最終的な評価を決めるピークは、やはり後半に残しておくほうが強いです。
山が早すぎる曲は、その瞬間だけ見ると派手ですが、演舞全体で見ると物語が途中で終わってしまったような印象になりやすい。これも非常によくある失敗です。
最後が弱い
そして、最ももったいない失敗が最後が弱いことです。
序盤も中盤も悪くない。途中には見せ場もある。けれど、終盤に入ってからもう一段上がりきらず、そのまま終わってしまう。こういう楽曲は、見ている最中はそれなりに楽しめても、演舞が終わった瞬間に印象が薄くなりやすいです。
これは大会において非常に不利です。審査員は多くの演舞を続けて見ていくため、最後の印象が弱いと、それまでの良さまで埋もれてしまうことがあります。
実際、現場感覚としても「途中まではすごく良かったのに、最後が惜しい」と感じる曲は少なくありません。原因はさまざまですが、よくあるのは次のようなケースです。
- 終盤に向けた再加速が足りない
- 最後の決めが弱く、余韻でも決着でもない中途半端な終わり方になっている
- 序盤や中盤で力を使いすぎて、最後に残すべき強さがなくなっている
よさこい楽曲は、最後の数十秒で全体の評価が大きく変わります。だからこそ、ラストは「残り物」ではなく、最初から設計しておくべき最重要パートです。
曲の終わり方が弱いと、演舞全体まで弱く見えてしまう。これは本当によくある“あるある”です。逆に言えば、最後をしっかり作り込むだけで、楽曲全体の印象は一段強くなります。
ソングメーカーがやっている設計プロセス
最初から正解を決めない
ここまでお読みいただくと、よさこい楽曲には「こうすれば入賞しやすい」という一定の型があることは、確かに感じていただけると思います。ですが、実際の制作現場では、私は最初から一つの正解を決めつけることはしていません。
理由はシンプルです。チームごとに、人数も違えば、振付も違う。表現したいテーマも、演舞の空気感も違うからです。同じ「迫力を出したい」というご要望でも、あるチームには静から入る構成が合い、別のチームには動から入るほうが自然なこともあります。
17年、1,200曲以上の制作を続けてきた中で強く感じているのは、良い楽曲は「型にはめること」で生まれるのではなく、相手の思いを丁寧に受け取り、そのチームに合った設計を見つけていくことで生まれるということです。
もちろん、こちらには経験から見えている傾向や、構成上のセオリーがあります。ですが、それをそのまま押しつけるのではなく、まずは「このチームには何が似合うのか」を考える。そこから始めるのが、ソングメーカーの制作です。
途中音源で調整
よさこい楽曲の制作では、言葉だけでイメージを100%共有することは、どうしても難しい部分があります。
「もう少し厳かにしたい」
「もっと力強い感じにしたい」
「思っていたよりも静かすぎる」
こうした感覚は、実際に音になって初めてはっきり見えてくることが多いです。だからソングメーカーでは、ある程度形になった段階で途中音源をお聴きいただき、そこから方向をすり合わせていきます。
この工程は、単なる確認作業ではありません。むしろここが、楽曲を本当にそのチームのものにしていくための重要な時間です。
実際、制作の現場では「最初に伺っていたイメージ」と「実際に音で聴いたときの感覚」が少し違うことは珍しくありません。これは悪いことではなく、むしろ自然なことです。そこから調整を重ねることで、表面的な“正しさ”ではなく、本当にしっくりくる構成に近づいていきます。
私はこのやりとりを、とても大切にしています。なぜなら、こうした丁寧なすり合わせこそが、最終的に「依頼して良かった」と感じていただける一曲につながると、経験として知っているからです。
納得するまで作る
そしてソングメーカーの制作方針を支えている大きな特徴が、修正回数に制限を設けていないことです。
よさこい楽曲は、数秒の入り方、数小節の展開、最後の30秒の作り方で印象が大きく変わります。だからこそ、一度作って終わりではなく、納得できるまで調整していく必要があります。
私はこれまで、音楽制作を通して多くのお客様と向き合ってきました。その中で一貫して大切にしてきたのは、お客様の立場で考えること、そして最後まで寄り添うことです。思っていたものと少し違うなら、近づける。もっと良くなる余地があるなら、そこを一緒に探る。そうした積み重ねが、長く続く信頼につながってきたと感じています。
もちろん、修正が増えるほど制作側の手間は増えます。効率だけを考えれば、どこかで区切りを設けたほうが楽なのかもしれません。それでも私がそうしないのは、楽曲制作が単なる納品作業ではなく、思いを形にして届ける仕事だと考えているからです。
寄り添うこと。
途中で投げ出さないこと。
納得できるまで一緒に作ること。
この姿勢は、特別なアピールのためではなく、私自身が17年間続けてきた仕事の中で、自然にたどり着いたやり方です。そして今では、その積み重ねこそが「人で選ばれる」理由の一つになっているのだと思っています。
「今の曲で本当に届くのか」を、そのままにしていませんか
この記事を読んで、
「構成の大切さは分かった」
「でも、自分たちの演舞に置き換えると何をどう見直せばいいのかは難しい」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
実際、よさこい楽曲は
良い要素を入れるだけでは強くなりません。
大切なのは、チームの人数、振付、テーマ、見せ場に合わせて、
どこで引き込み、どこで溜め、どこで解放するかを設計することです。
つまり必要なのは、一般論を知ることだけではなく、
自分たちの演舞に合う形に整理することです。
まずは演舞の設計を整理してみる
下のフォームは、「メールアドレス」と「お名前」「一言」だけで送れます。
まだ依頼を決めていない段階でも大丈夫です。
- 今の曲が悪いわけではないが、入賞につながる構成なのか不安
- 新曲を考えているが、どんな流れにすべきか整理したい
- 自分たちのチームに合う“勝てる構成”を考えたい
よさこい楽曲構成の整理フォーム
※営業は一切行いません。まずは、今の演舞や構成の考え方を整理するところからご一緒します。
ソングメーカー代表
井村淳也が直接お話を伺います。
まとめ
よさこい大会で結果を残す楽曲には、単なる“良い曲”では終わらない強さがあります。
その強さを支えているのが、構成です。
どこで引き込み、どこで溜め、どこで解放するのか。
どのように緩急を作り、音の厚みを支え、物語として記憶に残すのか。
入賞するチームの楽曲には、こうした要素がしっかりと設計されています。
つまり、入賞は偶然ではありません。
緩急・厚み・物語性という重要な要素を、再現できる形で組み上げていくことが必要です。
そしてその設計は、チームごとに異なります。
だからこそ、一般論だけではなく、実際の演舞や思いに合わせて、一緒に作っていくプロセスが大切になります。
入賞するための楽曲構成には、確かに共通点があります。
ただし本当に重要なのは、その共通点を自分たちの演舞に合う形で再現することです。
そこまで設計できて初めて、記憶に残る一曲が生まれるのだと、私は考えています。
ここまで読んで、
「うちの演舞にも、まだ見直せる余地があるかもしれない」
と感じた方へ。
曲をゼロから作るかどうかが決まっていなくても大丈夫です。
まずは今の演舞にとって、
何を強くし、どこを整理すべきかを見つけるだけでも意味があります。
「今の構成でいいのか、一度考えてみたい」
そんな一言からでも構いません。


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