
みなさんこんにちは!ソングメーカー代表、兼制作者の井村淳也です。
初めてよさこい楽曲を依頼する際、「どう伝えればいいかわからない」「制作の流れが見えず不安」という声を多くいただきます。
チームにとって一生に一度の大切な作品だからこそ、発注の第一歩で迷う方は少なくありません。
楽曲制作は、単に曲を「作る」作業ではなく、チームの想いを「形にする」共同作業です。
どんなに経験豊富な作曲家でも、依頼時の情報が曖昧だと、方向性のずれや修正の増加につながります。
逆に、依頼前に少しだけ準備をしておくだけで、完成までの流れは驚くほどスムーズになります。
本稿では、これまで550曲以上のよさこい楽曲を制作してきた経験から、「初めての依頼で失敗しないための5つの準備」を具体的に紹介します。
これを押さえておけば、初めてのオーダーでも安心して“自分たちの音”を届けることができます。
よさこい楽曲制作でチームの方向性を一言で伝える方法
チームとしてどんな雰囲気を届けたいのかを最初に整理する重要性
よさこい曲を依頼するときに、最初に整理しておくべきなのは「チームとしてどんな雰囲気を届けたいのか」という方向性です。
この“方向性”が曖昧なままだと、どれだけクオリティの高い楽曲が仕上がっても、チームの個性がぼやけてしまうことがあります。
「元気」「明るく」だけでは解釈が分かれる理由
たとえば「元気に」「明るく」という言葉だけでは、数百通りの解釈が可能です。
テンポの速さで元気を出すのか、ボーカルの勢いで明るさを表現するのか、あるいは和太鼓やかけ声のエネルギーで盛り上げるのか──。
作り手のイメージと依頼者のイメージがズレると、完成したときに「なんだか違う」と感じてしまうのはそのためです。
チームの方向性を一語で表現するメリット
そこでおすすめしたいのが、チームの方向性を“ひとことで言える”状態にしておくことです。
「挑戦」「優雅」「情熱」「絆」「新風」など、短いキーワードでチームの軸を表現できるようにすると、制作側の理解が格段に深まります。
そのキーワードは、後の作詞やアレンジにも自然と影響していきます。
キーワードが楽曲に与える具体的な設計例
たとえば「絆」という言葉を選んだ場合、旋律は穏やかで、ハーモニーに温かみを持たせた構成にするのが自然です。
一方で「挑戦」であれば、リズムにアクセントを効かせ、和楽器とエレキギターの掛け合いのような“衝突の美”を設計することもあります。
このように、たった一語のキーワードが、音楽全体の方向性を決める羅針盤になるのです。
参考動画や既存曲を共有する効果とその活用法
さらに効果的なのが、「参考動画や既存曲を2〜3本共有すること」です。
「このチームのような勢いがほしい」「このイントロの雰囲気が好き」など、具体的に示すことで、作曲家の頭の中に“音の座標軸”ができます。
その座標軸をもとに、どの要素をどこまで寄せるかを判断できるため、最初の段階から大きな方向のズレを防ぐことができます。
参考は方向性共有であり模倣ではない点の注意
ただし、参考にするのはあくまで「方向性の共有」であり、「真似」ではありません。
既存のチームにはそのチームの背景や想いがあり、それをそのままコピーしても“音の魂”までは再現できません。
重要なのは、“自分たちらしさ”をどこに置くかを明確にすることです。
チームカラーが未確定の場合の具体的な考え方
初めて依頼される方の中には、「まだチームのカラーが固まっていない」という場合も多いでしょう。
そのときは、「どんなチームに見られたいか」から考えてみるのも良い方法です。
観客が演舞を見終わったあとに、「かっこいい」「あたたかい」「新しい」と感じてほしい──その理想の印象が、方向性のヒントになります。
制作側のヒアリングと演舞構成打ち合わせへの好影響
井村の制作では、この段階のヒアリングに最も時間をかけます。
チームの活動年数や構成、衣装の色やテーマなど、音以外の情報からも全体像をつかむことで、音楽が“チームの延長線上にある作品”として自然に仕上がるよう意識しています。
こうした準備ができていると、次の「演舞構成」の打ち合わせもスムーズに進みます。
演舞構成の決め方と演舞時間バランスでよさこい楽曲の完成度を高める方法
演舞構成が楽曲の完成度を左右する重要ポイント
よさこいの楽曲制作において、曲の完成度を左右する最大のポイントの一つが「演舞構成」です。
これは、チームがステージ上でどのように物語を展開していくか──その“時間の流れ”を決める工程です。
この構成が曖昧なまま制作を始めると、曲のテンポや展開、尺のバランスが後から何度も修正になってしまい、制作の負担が大きくなります。
まず最初に決めておきたい演舞全体の尺(時間)の重要性
まず最初に決めておきたいのは、演舞全体の尺(時間)です。
多くの祭りや大会では、1曲あたりの演舞時間が4分前後に設定されています。
ただし、オープニングで静かに始まるチームもあれば、最初から爆発的な盛り上がりで観客を引き込むチームもあります。
そのため、単に「4分」と言っても、前半・中盤・終盤の構成比率をどうするかで印象はまったく変わります。
チーム構成による最適な構成の違い
チームのコンセプトや人数によって最適な構成は異なります。
たとえば、女性中心のチームでは「流れるような構成」が好まれる傾向があり、緩急をつけながら一曲全体を“物語のように”展開していくスタイルが多く見られます。
一方で、男性中心のチームや若年層の多いチームでは、「爆発力重視」の構成が合う場合が多く、間奏を短めにしてテンポを維持することで“勢い”を演出します。
細かい秒数は不要、共有はざっくりで十分な理由
ここで大切なのは、最初から細かい秒数まで決める必要はないということです。
むしろ、「流れのイメージをざっくり共有する」程度で構いません。
たとえば、以下のような書き方でも十分伝わります。
- 「最初はしっとり始まり、途中から勢いが増す構成にしたい」
- 「サビが2回ではなく、後半にロングサビを入れたい」
- 「ラストは太鼓と掛け声で一気に締めたい」
このようなキーワードの共有だけで、作曲家側は“曲の設計図”を描けるようになります。
結果として、完成までの流れがスムーズになり、修正も少なく済みます。
振付師との連携と振付先行型チームへの対応
また、振付師との連携も非常に重要です。
特に近年は「振付先行型」で動くチームが増えています。
振付が先にできている場合は、振付動画やカウント表(8カウント単位)を共有してもらえると、音の構成を正確に合わせることができます。
逆に、音が先の場合は「振付しやすいテンポ」や「場面転換に必要な秒数」などをあらかじめ共有しておくことで、後のズレを防ぐことができます。
井村の制作プロセスと構成固めがもたらす効果
井村の制作では、途中経過の段階で「演舞構成とのすり合わせ」を必ず行っています。
このタイミングで方向性を合わせることで、最終版での修正回数を最小限に抑えることができます。
特に特急コースの場合は、修正対応以外の制作時間を短縮して納期を守るため、構成が事前に固まっているほど進行がスムーズになります。
観客の体感を設計する視点での構成の本質
最後にもう一つ。
構成を決めるときに大事なのは、“観客の体感”をイメージすることです。
音楽的な完成度だけでなく、「観る人がどのタイミングで心をつかまれるか」を設計できるチームほど、印象に残る演舞になります。
構成とは、チームの物語を「時間」というキャンバスに描く作業なのです。
よさこい楽曲制作 想いを言葉にする方法 曲に込めたい想いを伝えるためのポイント
よさこい楽曲づくりは物語づくりであるという前提
よさこいの楽曲づくりは、単なるBGM制作ではありません。
それはチームの想いを「音」という形で表現する、ひとつの“物語づくり”です。
曲の完成度を左右するのは、実はメロディやアレンジの巧みさよりも、最初に共有される“想いの明確さ”だと私は感じています。
「誰に」「何を」届けたいのかを明確にする重要性
● 「誰に」「何を」届けたいのか
最初に考えていただきたいのは、この2つの問いです。
「誰に」「何を」届けたいのか。
この問いを明確にすると、自然と曲のトーンや展開が定まっていきます。
たとえば、地域の人々への感謝を込めたい場合と、チームの成長や挑戦をテーマにしたい場合とでは、求められるエネルギーの方向がまったく異なります。
前者ならば“温かさ”や“包容力”のある音づくりが合いますし、後者ならば“勢い”や“緊張感”を感じる構成が合うでしょう。
想いの軸が定まっていると、歌詞やメロディだけでなく、リズムや楽器の選択にも自然と一貫性が生まれます。
逆に、依頼時に「なんとなく元気な曲で」としか伝わっていない場合、作曲家は複数の方向性を試す必要が出てきて、結果的に完成までの時間が長くなってしまいます。
言葉が曲の方向を決めるという考え方
● 言葉が「方向」を決める
想いを言葉にすることは難しいと感じるかもしれません。
しかし、短い言葉でも構いません。「希望」「再生」「絆」「新風」「感謝」──たった一語でも、曲の方向性を決定づける力を持っています。
井村の制作現場では、ヒアリングの際に「この曲がどんな言葉に包まれていたら嬉しいですか?」という質問をよくします。
すると、お客様の口から自然に出てくるのは、意外にも専門的な表現ではなく、人の想いを表す素朴な言葉ばかりです。
「子どもたちが誇りに思える曲にしたい」
「亡くなった創設者に届けたい」
「地域の人たちに“おかえり”と言ってもらえる曲にしたい」
そうした想いのひとつひとつが、最終的には歌詞の一行や、旋律の一音として形になります。
それは、作り手がどんなに工夫しても生み出せない、依頼者だけが持っている“物語の核”なのです。
想いを書き出すことの実践的な効果
● 書き出すことで見えるもの
想いを整理する際には、箇条書きでも良いので紙に書き出してみるのがおすすめです。
「どんな場面で流れてほしいか」「聴いた人にどう感じてほしいか」「チームのどんな瞬間を思い出してほしいか」──
それを3〜5項目程度書くだけでも、作曲家との打ち合わせの密度が格段に上がります。
中には、「感情をどう言葉にしていいかわからない」という方もいます。
その場合は、“対比”の形で表現してみるのも一つの方法です。
たとえば「静かな中に熱がある」「力強いけれど優しい」「重厚だけれど軽やか」など、相反する言葉を並べることで、求めるニュアンスがより伝わりやすくなります。
このような曖昧さを恐れずに共有してもらうことで、むしろ“人間らしい温度”を持った作品に仕上がるのです。
作曲は言葉や感情を音に翻訳する作業であるという視点
● 音楽は“翻訳”である
作曲とは、言葉や感情を“音”に翻訳する作業です。
つまり、どれだけ豊かな翻訳ができるかは、原文となる「依頼者の言葉」にかかっています。
想いがしっかり届けば届くほど、作曲家はその感情を具体的な旋律やハーモニーに置き換えやすくなります。
井村の制作では、完成した曲を納品するときに、「この部分のメロディはあの言葉から生まれました」とお伝えすることがあります。
それを聞いた依頼者の方が、「まさにその気持ちを音で表現してくれた」と涙ぐまれる瞬間──そのときに初めて、楽曲が“共有された作品”になるのだと思います。
想いは技術を超えるという結論と行動の呼びかけ
● 想いは技術を超える
音楽制作の世界では、理論や機材、編曲技法が注目されがちです。
しかし、最終的に人の心を動かすのは、“誰かの想い”です。
プロのアレンジや最新の音源よりも、心からのメッセージが込められた作品のほうが、何年経っても色あせません。
曲づくりの最初の段階で、その“想い”を自分の言葉で語る勇気を持つこと。
それこそが、初めての依頼を成功に導く、最大の準備と言えるでしょう。
よさこい楽曲の予算と納期のリアルを把握するための実務ガイド
楽曲制作依頼で不安になりやすい費用と納期の基本的な問題意識
楽曲制作の依頼でよくある不安の一つが、「どのくらいの費用がかかるのか」「納期はどの程度見ておけばいいのか」という点です。
特に初めての依頼では、この2つの要素を誤解したまま進めてしまい、思わぬトラブルやスケジュールの遅れにつながることがあります。
ここでは、実際の制作現場の流れをもとに、よさこい楽曲制作の“現実的な目安”を整理してみます。
一般的な制作スケジュールの流れと各工程の目安
● 一般的な制作スケジュールの流れ
通常の制作では、構想から完成までに3〜5週間ほどを見ておくと安心です。
具体的には、以下のような工程を経て進行します。
- ヒアリング・方向性確認(1〜3日)
チームのテーマ、構成、想いなどを共有し、制作方針を固めます。 - 仮メロディ・構成案の提示(約1〜2週間)
この段階で曲の骨格が決まり、方向性のズレがないか確認します。 - 途中経過版(2〜3週間目)
ドラム・ベース・メロディが揃った状態で一度確認。修正点を洗い出します。 - 修正・仕上げ(1〜2週間)
音量バランス、エフェクト、マスタリングを経て完成。必要に応じて歌入れやCD化工程へ。
井村の制作では、途中経過までを2〜3週間、そこから完成まで1〜2週間というスケジュールが最も多いパターンです。
もちろん、チームの準備状況や修正回数によって変動しますが、最初からこの全体像を理解しておくことで、焦らず落ち着いた進行が可能になります。
特急コースの活用ケースと短縮の仕組み
● 特急コースを活用するケース
祭り直前や緊急の演舞スケジュール変更などで、「どうしても早く完成させたい」という場合もあります。
その際に用意しているのが特急コースです。
特急コースでは、修正対応以外の制作期間を大幅に短縮し、優先的に進行します。
通常2〜3週間かかる途中経過までを4〜5日で仕上げ、完成までの工程も2〜3日でご用意します。
ただし、修正が発生した場合には、その内容と回数に応じて追加の期間が必要になります。
つまり、修正対応部分は納期に追加されるものの、
「制作そのもののスピードを約束した上で進行する」ため、最終的な納品までの短縮が実現できます。
この仕組みを理解しておけば、「急いで頼んだのに直しが多くて結局間に合わなかった」という事態を防ぐことができます。
特急対応は“魔法のボタン”ではなく、優先度と集中時間の再配分によるスピード化だと考えてください。
予算の考え方と依頼時の支払い・修正方針
● 予算の考え方
依頼の際に多い質問が「どのくらいの費用で依頼できるのか」という点です。
よさこい楽曲の制作は、アレンジ・ボーカル録音・マスタリング・権利処理などの要素によって幅がありますが、井村の制作では後払い制かつ修正無制限を採用しています。
この仕組みは、制作途中で「もっとこうしたい」という変更が出ても、費用を気にせず安心して進められるように設計されています。
また、複数のチームやイベント主催者から同時に依頼を受ける場合には、スケジュールの調整が必要になるため、できるだけ早めの相談をおすすめしています。
たとえば、春の祭りシーズン(3〜5月)や秋の大会シーズン(9〜11月)は特に混み合うため、
理想的には1〜2か月前には構想を共有しておくのが安全です。
時間を味方につける依頼方法と早め相談の効果
● 「時間を味方につける」依頼方法
経験上、依頼がうまく進むチームには一つの共通点があります。
それは、納期を守るために“早めに動く”チームほど、結果的に良い作品を手にしているということです。
制作を始めてから慌てて構想を固めるよりも、1週間でも早く相談を始めるほうが、修正や提案の余地が広がります。
早めに方向性を固めておけば、アレンジや楽器構成を練り直す時間も確保でき、完成度が高まります。
井村の制作では、「途中経過版を聴いたうえで方向修正する」スタイルを重視しているため、
依頼側の準備と進行のスピードが合致したとき、最も良いサイクルが生まれます。
納期交渉は信頼構築の一部であるという観点
● 「納期の交渉」も信頼の一部
初めて依頼される方の中には、「短納期をお願いするのは失礼では…」とためらう方もいます。
けれども、正直に事情を伝え、可能な範囲で調整を相談すること自体が、制作への真剣さの表れです。
むしろその姿勢が伝わるほど、制作者側も本気で応えたくなります。
大切なのは、無理を押しつけることではなく、「一緒にどうすれば間に合うか」を考えること。
その姿勢こそが、信頼関係の第一歩になります。
制作者と対話して楽曲クオリティを高める方法 制作者と対話できる関係の築き方
よさこい曲制作は依頼後の対話が完成度を決める
よさこい曲の制作は、依頼して終わりではありません。
むしろ、依頼したあとにどれだけ制作者と対話を重ねられるかで、作品の完成度が決まります。
ここで言う“対話”とは、ただ意見を伝えるだけではなく、同じゴールを見つめながら一緒に考えていく関係のことです。
「伝える」ではなく「共有する」と意識を変える重要性
● 「伝える」ではなく「共有する」
初めて依頼をされる方の中には、「専門的なことはわからないのでお任せします」と控えめにおっしゃる方が多くいらっしゃいます。
もちろんその姿勢は誠実ですし、信頼を寄せていただいていることの表れでもあります。
しかし、制作の現場では“お任せ”がかえって方向性のズレを生むことも少なくありません。
音楽は感覚的な表現だからこそ、「この部分はもう少し柔らかく」「ここはもう一歩前に出たい」といった言葉でも十分に伝わります。
たとえ専門用語でなくても、感じたままを率直に言葉にすることが最も大切なのです。
制作の打ち合わせでは、「伝える」ではなく「共有する」という意識があるかどうかで、結果が大きく変わります。
一方的に要望を伝えるだけでなく、「この曲ができたらどういう瞬間に流れてほしいか」「どんな表情で踊ってほしいか」といった背景まで共有してもらえると、作曲家はそこから音の温度や色を想像しやすくなります。
修正無制限の仕組みが意味する対話前提の制作スタイル
● “修正無制限”の本当の意味
井村の制作では、「修正無制限・追加費用なし」という仕組みを採用しています。
これは単なるサービス的な特徴ではなく、対話を前提とした制作スタイルを形にしたものです。
修正が入るということは、依頼者の想いが言葉になり、作品に新しい方向が見えてきた証拠でもあります。
そのプロセスを大切にしたいからこそ、修正に制限を設けていません。
「最初の依頼で全部伝えきれなかった」「途中でアイデアが変わった」ということもあります。
それを“迷い”ではなく、“成長”として扱うのが、井村の制作スタンスです。
お互いが本音で話せる関係が築けたとき、音楽は初めて“チームの言葉”になります。
制作者を共作者と見なす共同創作の姿勢
● 制作者を“外部パートナー”ではなく“共作者”として見る
よさこいの曲づくりは、まさに共同創作です。
制作者を外部の専門家として距離を置くのではなく、同じ作品をつくる仲間として関わる意識が大切です。
依頼者が「ここをもう少しこうしてみたい」と提案し、作曲家が「それならこういう構成はどうですか」と返す──
この往復があるチームほど、最終的な作品の熱量が高くなります。
井村自身、これまで550曲以上を制作してきた中で、特に印象に残る作品は、最後まで会話が途切れなかった案件です。
最初は遠慮がちだった依頼者が、後半になると「この部分の太鼓、もう少し太くできますか?」と具体的に意見をくださるようになる。
そうした瞬間に、制作の主導権が“お互いの間”に移るのです。
対話が生む安心と信頼が制作を前進させる
● 対話が“安心”を生む
多くのチームにとって、オリジナル曲の制作は大きな投資です。
だからこそ、依頼後に「本当に大丈夫かな」「伝わっているかな」という不安が生まれるのは当然です。
その不安を解消するのは、納品のスピードや料金表ではなく、日々の対話です。
途中経過の段階で感想を伝え合い、変更点を相談しながら進めることで、双方にとって納得のいく作品が生まれます。
井村が後払い制を採用しているのも、信頼関係を重視しているからです。
「まず完成を見てから判断してほしい」という姿勢には、
“依頼者の安心”を最優先にしたいという想いが込められています。
制作の終点は納品ではなく届け方 共に届け方を考える協働プロセス
● 一緒に「届け方」をつくる
楽曲制作の終点は“納品”ではなく、“届け方”です。
どんなに素晴らしい曲でも、音源をどう使い、どう伝えるかによって印象は大きく変わります。
制作者と対話を重ねながら「どう聴かせるか」「どう残すか」を考えることこそ、本当の意味でのコラボレーションです。
対話とは、相手を信じて話すこと。
依頼者と制作者の信頼が積み重なるほど、曲には深みが生まれ、ステージに立つ一人ひとりの表情にも力が宿ります。
“良い曲”は、話し合いの数だけ磨かれていく。
それが、17年にわたって私が変わらず感じている真実です。
よさこい楽曲制作の準備の質が作品完成度を決める理由と実践ポイント
初めての依頼成功に最も大切な準備の質について
初めての依頼を成功させるために最も大切なのは、準備の質です。
準備とは、単に資料を集めたり情報を伝えたりすることではありません。
「自分たちはどんなチームで、どんな想いを込めたいのか」を整理し、制作者と共有できる状態を作ること──それこそが、本当の意味での“準備”です。
経験から見える完成度を決める段階の重要性
これまで550曲以上のよさこい楽曲を手がけてきた経験の中で、私は常に感じています。
最終的な完成度を決めるのは、制作の途中よりもむしろ依頼前の段階にあるということを。
準備が整っているチームほど、打ち合わせのたびに具体的なイメージが交わされ、修正もスムーズに進み、完成までの流れに一切の無駄がありません。
準備は信頼の第一歩であるという視点
● 準備は「信頼」の第一歩
依頼時のやり取りで、最初に伝わるのは「言葉」よりも「姿勢」です。
「きちんと準備して臨もう」というその姿勢は、制作者にとって何よりの安心材料になります。
それは、相手を信頼し、共に良い作品を作ろうとしている証でもあります。
音楽制作は、契約ではなく信頼の上に成り立つ共同作業です。
お互いが安心して話せる関係があれば、多少の修正や変更も前向きに受け止められ、むしろ作品の深みにつながります。
準備を怠らないチームほど、結果的に信頼を築きやすく、その信頼が完成度を押し上げるのです。
安心できる環境が良い作品を生む仕組み
● “安心できる環境”が良い作品を生む
井村の制作では、「後払い制」「修正無制限」「追加費用なし」を基本方針としています。
この仕組みは、依頼者にとっての心理的な不安を取り除き、安心して意見を出せる環境をつくるためのものです。
「納品まで何が起きるかわからない」という不安を抱えたままでは、チームの想いは十分に表現できません。
だからこそ、料金や納期といった現実的な要素を明確にし、制作中に不安を感じることがないよう徹底しています。
安心して話せる場があるからこそ、本音の意見が出て、曲が磨かれていく──その積み重ねが最終的な“質”につながるのです。
準備の質が作品の深さに現れる理由
● 「準備の質」は作品の“深さ”に現れる
よさこいの楽曲は、単なる音の集合ではなく、チームの“生き方”そのものです。
音の裏にどれだけの想いが込められているか、聴く人には不思議と伝わります。
それは、準備の段階でどれだけ真剣に向き合ったか、どれだけ丁寧に想いを言葉にしたか──その深さが、最終的に“音の厚み”となって表れるのです。
準備とは、曲を作るための前段階ではなく、作品づくりそのものの一部です。
チーム全員で想いを整理し、それを制作者と共有する時間は、すでに“音づくり”の第一章なのです。
依頼はスタートラインではなく共走の始まりであるという考え方
● 依頼は「スタートライン」ではなく「共走の始まり」
初めての依頼は誰にとっても緊張します。
しかし、それは同時に、自分たちの物語を音で語り始める第一歩でもあります。
依頼を出すことは、スタートラインに立つことではなく、制作者と共に走り始めることなのです。
チームが想いを持ち、制作者が耳を傾け、互いに歩幅を合わせながら進んでいく。
その過程そのものが、すでに“作品の一部”です。
最後に伝えたい結論と行動の呼びかけ
● 最後に
音楽づくりの正解は一つではありません。
けれど、一つだけ確かなことがあります。
それは、「準備の質」こそが、完成度の差を生む最大の要因であるということです。
方向性を整理し、構成を考え、想いを言葉にし、予算と納期を理解し、そして制作者と対話を重ねる──。
そのすべてが積み重なったとき、チームの物語は“音”という形で息づきます。
安心して、そして誇りを持って、自分たちの一曲を届けてください。
その準備のすべてが、きっと舞台の上で美しい輝きとなって響きます。



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