
皆さんこんにちは!ソングメーカー代表、井村淳也です。
よさこい楽曲は、ただ激しく盛り上がれば良いわけではありません。むしろ、審査員や観客の記憶に残る曲ほど、強い場面の前に「静寂」や「間」がきちんと設計されています。
音を抜く。少し待たせる。一瞬、空気を止める。そうした時間があるからこそ、その後に来る爆発が何倍にも強く感じられます。ずっと全力で鳴り続ける曲よりも、静と動の落差がある曲のほうが、演舞全体の印象は深く残ります。
私はこれまで550曲以上のよさこい楽曲制作に携わる中で、緩急の使い方ひとつで、同じメロディや振付でも見え方が大きく変わる場面を何度も見てきました。
今回の記事では、審査員の記憶に刻まれるために重要な「静寂」と「爆発」の使い分けについて、実際の制作経験をもとに整理していきます。
この記事を読むことで得られること
- よさこい楽曲で「静寂」や「間」が重要になる理由が整理できます
- 盛り上がりを強く見せるための緩急設計の考え方がわかります
- 審査員や観客の記憶に残る演舞にするための楽曲づくりの視点が得られます
まず結論:よさこい楽曲の強さは、音量や派手さだけではなく、「静寂」と「爆発」の落差をどう設計するかによって生まれます。
なぜ“ずっと激しい曲”は印象に残らないのか
人は変化に反応する
よさこい楽曲を考えるとき、多くのチームが「もっと迫力を出したい」「もっと盛り上げたい」と考えます。もちろん、それ自体は間違いではありません。
しかし実際には、最初から最後まで激しい曲が、必ずしも強い印象を残すとは限りません。その理由は、人が変化に反応する生き物だからです。
どれだけ迫力のある音でも、それが長時間続けば次第に慣れてしまいます。これは音楽だけではなく、日常生活でも同じです。最初は大きく感じた刺激も、時間が経つにつれて当たり前になっていきます。
つまり、同じ強さが続く状態では、その強さを感じ続けることができません。よさこい楽曲でも同様です。ずっと全力で走り続ける構成は、一見すると勢いがあるように見えますが、観客や審査員の感覚は徐々に麻痺していきます。
だからこそ、本当に強い楽曲ほど、変化を意識した設計がされています。
強さは比較で生まれる
実は「強い音」そのものに力があるのではありません。人が強さを感じるのは、比較があるからです。
静かな場面があるからこそ、次の盛り上がりが強く感じられる。音数を減らした瞬間があるからこそ、再び楽器が戻ってきた時に大きな解放感が生まれる。つまり、強さとは絶対値ではなく、落差によって生まれる感覚なのです。
これはよさこい演舞でも非常に重要です。
静かな導入。中盤のブレイク。一瞬の無音。こうした「静」があるからこそ、その後の「動」が映えます。
逆に言えば、静かな場面が存在しない曲では、最大の盛り上がりさえ平坦に聞こえてしまうことがあります。
感情を動かすのは音量そのものではありません。静と動の落差です。その落差があるからこそ、人は驚き、引き込まれ、記憶に残るのです。
審査員も観客も疲れている
大会という環境を考えると、この緩急設計はさらに重要になります。
審査員は一日に何十チームもの演舞を見ています。観客もまた、長時間にわたって演舞を見続けています。つまり、会場にいる人たちは想像以上に多くの情報を受け取り続けているのです。
そんな中で、最初から最後まで同じテンションの曲が続くと、どうしても印象は薄れていきます。
だからこそ必要なのが、再点火です。
一度空気を落ち着かせる。少しだけ耳を休ませる。そして再び盛り上げる。この流れがあることで、観客も審査員も再び演舞に集中することができます。
私はこれまで550曲以上の制作を通して、多くの入賞チームの楽曲を研究してきました。そこで感じるのは、強いチームほど決して鳴らし続けていないということです。むしろ印象に残る楽曲ほど、どこかに必ず「静かな時間」があります。その静けさがあるからこそ、次に訪れる爆発が強くなる。そして、その落差こそが観客や審査員の記憶に残るのです。
強い曲ほど、実は静かな時間を持っている。
緩急設計の第一歩は、その事実を理解することから始まります。
静寂の役割|“音を抜く”ことが最大の演出になる
静寂は無音ではない
よさこい楽曲で「静寂」と聞くと、完全に音が消える場面を想像されるかもしれません。もちろん、一瞬の無音が強い効果を生むこともあります。
しかし実際の演舞では、静寂は必ずしも何も鳴っていない状態を意味するわけではありません。
音楽の音数を減らしたとき、そこに残るものがあります。
踊り子の息遣い。掛け声。足音。衣装が揺れる気配。そうした音や空気まで含めて、よさこいの静寂は成り立っています。
楽器が鳴っていないから弱いのではありません。むしろ楽器を引くことで、踊り子自身の存在感が前に出ることがあります。音楽が一歩引いた瞬間に、演舞そのものが強く見える。これが、よさこい楽曲における静寂の面白さです。
期待を作る時間
静寂には、もう一つ大きな役割があります。それは、期待を作ることです。
人は音が鳴っているときだけ反応しているわけではありません。むしろ、音が少なくなった瞬間に「次は何が来るのか」と意識が集中します。
少し待たせる。一瞬、空気を止める。次の展開を想像させる。この時間があることで、その後に来る爆発が何倍にも強く感じられます。大サビ前やクライマックス前に、一度音を抜く構成が効果的なのはそのためです。
観客は無意識のうちに次を待っています。審査員もまた、その緊張感の中で演舞に集中します。
つまり静寂とは、ただ音が少ない時間ではありません。次の爆発を信じて待たせるための演出です。
550曲で感じた“静寂が効く瞬間”
私はこれまで550曲以上のよさこい楽曲制作に携わってきましたが、静寂が特に効く場面には、いくつかの共通点があると感じています。
まず一つ目は、導入です。演舞の始まりであえて音数を抑えると、観客の視線が自然に舞台へ集まります。最初から鳴らし切るのではないからこそ、静かに空気を作ることで、その後の展開に期待感が生まれます。
二つ目は、中盤です。序盤で一度盛り上げたあと、中盤で音を抜くと、演舞に呼吸が生まれます。ここで空気を切り替えられる曲は、後半に向けてもう一度観客を引き込むことができます。
三つ目は、ラスト前です。最後のクライマックスに入る直前に、一瞬静寂を作ると、会場全体が次の一音を待つ空気になります。その後に低音や和太鼓、掛け声が一気に入ると、爆発力は大きく増します。
こうした静寂の使い方は、机上の理論だけではなかなか見えてきません。実際に何度も曲を作り、修正し、演舞との相性を見ながら積み重ねてきた中で、少しずつ実感として身についてきたものです。
だから私は、静寂を単なる休みとは考えていません。静寂は、次の感情を引き出すための大切な設計です。
「もっと盛り上げたい」と思って音を足しているのに、なぜか印象が強くならない。
そんな時は、音量ではなく“緩急”を見直すタイミングかもしれません。
爆発の役割|なぜ人は盛り上がるのか
爆発は突然作れない
よさこい楽曲で大きな盛り上がりを作りたいとき、つい「ここで一気に派手にしよう」と考えたくなります。もちろん、クライマックスで音を厚くしたり、リズムを強くしたりすることは重要です。
しかし、本当に観客の心が動く爆発は、突然作れるものではありません。その前に、必ず溜めが必要です。
静かな時間。音数を減らした場面。次を待たせる空気。そうした準備があるからこそ、その後の爆発が強く感じられます。
もし何の準備もなく突然大きな音が来ても、観客の感情は追いつきません。「派手だな」とは感じても、「来た!」という高揚感にはなりにくいのです。
爆発は、音が大きくなる瞬間ではなく、溜めてきた感情が一気に解放される瞬間です。
音量より変化量
爆発を作るうえで大切なのは、単純な音量ではありません。本当に重要なのは、変化量です。
直前まで鳴っていなかった楽器が入る。低音が一気に戻ってくる。掛け声やコーラスが重なる。このような変化があることで、観客は「場面が変わった」と感じます。
たとえば、楽器を最初からすべて鳴らしていると、クライマックスで追加できる要素が少なくなります。逆に、直前まで少し抑えておけば、楽器が入った瞬間に大きな解放感が生まれます。
低音も同じです。ベースやキック、和太鼓を一度引いておき、ここぞというタイミングで戻すことで、身体に届くインパクトは大きくなります。
さらに、声の追加も非常に効果等です。掛け声やコーラスが入ると、楽曲の熱量が一気に人間的になります。
音量を上げるよりも、何が加わったのか、どれだけ空気が変わったのか。その変化こそが、爆発力の正体です。
身体が先に反応する瞬間
本当に強い爆発が来たとき、人は頭で考える前に身体が反応します。思わず前のめりになる。手拍子をしたくなる。踊り子の動きが一段大きく見える。こうした反応を生むのは、メロディだけではありません。大きく関わっているのが、低音とリズムです。
ベースは楽曲の土台を支え、身体を前へ運ぶグルーヴを作ります。キックは拍の芯を作り、動きのタイミングを明確にします。和太鼓は空気そのものを震わせ、よさこいらしい迫力と高揚感を生み出します。
この三つが噛み合った瞬間、爆発は耳で聴くものではなく、身体で感じるものになります。
以前の記事でも低音設計の重要性について触れましたが、緩急設計においても低音は非常に重要です。静寂で一度引いた低音が、爆発の瞬間に戻ってくる。その落差が、観客の身体を一気に動かします。
つまり、爆発とは単なる音の派手さではありません。身体が先に反応するように設計された、感情の解放点なのです。
ソングメーカー流|緩急設計の具体メソッド
中盤に一度落とす勇気
緩急設計で最も難しいのは、「どこで盛り上げるか」ではなく、どこであえて落とすかです。
制作を始めたばかりの頃は、私自身も「盛り上がる曲=良い曲」と考えていた時期がありました。しかし550曲以上の制作を重ねる中で感じたのは、強い楽曲ほど盛り上げ続けていないということです。むしろ、しっかりと落とす場面を持っています。
なぜなら、人は同じ刺激に慣れてしまうからです。序盤で盛り上がり、中盤でも盛り上がり、後半も盛り上がり続ける。一見すると豪華ですが、実際にはどこが見せ場なのか分かりにくくなります。
そこで私は、中盤で一度空気を整理することを意識しています。
音数を減らす。低音を引く。和楽器だけにする。あるいは掛け声だけを残す。こうした場面を作ることで、観客も審査員ももう一度演舞に集中できます。
落とすことは弱くすることではありません。後半を強くするための準備です。この発想を持つだけで、楽曲全体の見え方は大きく変わります。
ブレイクの作り方
緩急設計の中でも特に重要なのが、ブレイクです。ブレイクというと、すべての音を止めるイメージを持たれることがありますが、実際にはそうとは限りません。大切なのは、何を消すかよりも、何を残すかです。
例えば、低音だけを消してみる。逆にメロディだけを消してみる。和太鼓だけ残す。掛け声だけ残す。こうした選択によって、ブレイクの印象は大きく変わります。
私が制作で意識しているのは、「全部を消す」のではなく、「主役を入れ替える」という考え方です。それまで前に出ていたものを引き、別の要素を目立たせる。すると観客は自然に空気の変化を感じます。そして、その後に本来の主役が戻ってきた時、大きな解放感が生まれます。
ブレイクとは休憩ではありません。次の場面を強くするための演出です。だからこそ、何を残して何を消すのかを丁寧に考える必要があります。
爆発の順番を設計する
そして最後に重要なのが、爆発そのものの設計です。ここでよくある失敗が、「全部を一度に戻してしまう」ことです。もちろん、それでも一定の迫力は出ます。しかし、本当に強い爆発は順番を持っています。
例えば、まず低音が戻る。次にドラムが入る。その後にメロディが広がる。最後に掛け声やコーラスが重なる。こうした段階的な投入によって、観客は「まだ上がる」「さらに来る」と感じ続けることができます。
和楽器も同様です。三味線を先に入れるのか。尺八を後から重ねるのか。和太鼓をどのタイミングで解放するのか。この順番一つで、クライマックスの印象は大きく変わります。
声の使い方も重要です。掛け声を最初から入れるのか。最後の大サビで初めて入れるのか。観客参加型のコールをどこで使うのか。それぞれに意味があります。
私は制作の際、爆発そのものよりも、その直前の流れと投入順を重視しています。なぜなら、人が盛り上がるのは結果ではなく、変化の過程だからです。
緩急設計とは、単に静かな場面と激しい場面を並べることではありません。どの順番で感情を動かしていくかを設計することです。その積み重ねが、観客や審査員の記憶に残る演舞につながっていきます。
「盛り上がっているのに印象が弱い」を、そのままにしていませんか
この記事を読んで、「うちの曲もずっと全力かもしれない」「もっと記憶に残る演舞にしたい」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実際によさこい楽曲では、音を増やすことよりも、どこで引くか・どこで待たせるかによって印象が大きく変わります。問題はメロディや音量ではなく、感情の流れや構成設計が整理されていないことかもしれません。
チームの見せ場を整理してみる
下のフォームは、「メールアドレス」と「お名前」「一言」だけで送れます。
まだ依頼を決めていなくても大丈夫です。
- 曲が平坦に感じる
- クライマックスが思ったほど盛り上がらない
- 演舞の見せ場に合った緩急を作りたい
静寂と爆発 of の設計相談フォーム
※営業は一切行いません。まずはチームの演舞や見せ場を整理するところからご一緒します。
ソングメーカー代表
井村淳也が直接お話を伺います。
よくある失敗パターン
最初から最後まで全力
緩急設計で最も多い失敗の一つが、最初から最後まで全力で走り続けてしまうことです。
「盛り上がる曲にしたい」「迫力を出したい」「会場を沸かせたい」そう考えるあまり、序盤から強いビート、大きな低音、派手なアレンジを次々と投入してしまうケースがあります。
もちろん、その瞬間だけ見れば迫力はあります。しかし、問題はその後です。最初から100%の力を使ってしまうと、後半でさらに上げる余地がなくなります。
結果として、演舞全体が一本調子になり、観客や審査員の感覚は徐々に慣れていきます。本来であればクライマックスで感じるはずの高揚感も、序盤と同じ強さに聞こえてしまいます。
実際、入賞するチームの楽曲を見ていると、最初から全力の曲はそれほど多くありません。むしろ、どこかに余白を残しています。
強い楽曲とは、ずっと強い曲ではありません。強くなるための余地を残している曲です。
静寂が長すぎる
一方で、緩急を意識するあまり、静かな場面を長く取りすぎてしまうケースもあります。確かに静寂は強力な演出です。期待を作り、次の爆発を引き立てる効果があります。
しかし、その時間が長くなりすぎると、今度は別の問題が生まれます。観客の集中力が切れてしまうのです。
特に大会会場では、多くのチームが次々と演舞しています。その中で静かな場面が長く続くと、期待感ではなく退屈さにつながることがあります。
静寂はあくまでも次の展開を待たせるためのものです。待たせることが目的になってしまうと、本来の役割を失います。
私は制作の際、静かな場面を作るときほど「いつ戻すか」を意識しています。静寂そのものを見せたいのではなく、その先の変化を見せたいからです。だからこそ重要なのは長さではありません。どれだけ期待を高められるかです。
爆発が早すぎる
もう一つよくある失敗が、爆発が早すぎることです。序盤で観客をつかみたい。最初の印象を強くしたい。そう考えるのは自然なことです。
しかし、そこで最大の爆発を使ってしまうと、その後の展開が苦しくなります。よさこい楽曲は約4分。その中で観客の感情をどう運ぶかが重要です。最初の30秒でピークを迎えてしまうと、残りの3分半はそのピークを超えなければならなくなります。これは非常に難しい構成です。
実際、印象に残る楽曲ほど、最大の爆発は後半に残しています。序盤は期待を作る。中盤で変化を作る。そして後半で解放する。この流れがあるからこそ、最後のクライマックスが強くなります。もちろん例外はあります。しかし基本的には、爆発は早いほど良いわけではありません。どのタイミングで使うかが重要なのです。
ここまで見てきたように、緩急設計で大切なのは極端さではありません。盛り上げ続けてもいけない。静かすぎてもいけない。早すぎてもいけない。つまり、緩急設計の本質はバランスです。
静と動。期待と解放。溜めと爆発。それらをどのような比率で配置するかによって、楽曲の印象は大きく変わります。
緩急とは、音量の問題ではなく、感情のバランスを設計する技術なのです。
井村淳也が緩急設計で大切にしていること
盛り上げるより“引き込む”
ここまで緩急設計についてお話してきましたが、私自身が制作で最も大切にしているのは、実は「盛り上げること」ではありません。引き込むことです。
もちろん、よさこい楽曲ですから迫力や高揚感は重要です。しかし、それだけを追いかけてしまうと、どうしても音を足す方向に発想が寄ってしまいます。もっと低音を入れる。もっと和太鼓を重ねる。もっと派手にする。けれど実際には、それだけで人の心が動くわけではありません。
観客や審査員が演舞に引き込まれるのは、「次はどうなるんだろう」と思った時です。空気が変わる瞬間。音が抜ける瞬間。予想を少し裏切る展開。そうした小さな変化の積み重ねが、演舞全体への集中力を生み出します。
だから私は、単純に盛り上げることよりも、どうすれば最後まで見続けたくなるかを考えています。緩急とは、音量を操作する技術ではありません。人の感情を導くための設計だと考えています。
踊りの見せ場を優先する
もう一つ、私が強く意識しているのが、音楽よりも先に踊りの見せ場を考えることです。これは550曲以上制作してきた中で、年々強くなってきた考え方でもあります。
作曲家として考えれば、どうしても音楽そのものに意識が向きます。どこで盛り上げるか。どんなコード進行にするか。どんな楽器を使うか。もちろんそれも大切です。しかし、よさこいは音楽単体で成立するものではありません。踊りと一体になって初めて完成します。
だから私は、制作の際に必ず考えます。ここでジャンプするのか。ここで隊形変化があるのか。ここで決めポーズを作るのか。
もし踊りの見せ場と音楽のピークがずれていたら、せっかくの演出効果は半減してしまいます。逆に、音楽の爆発と踊りの見せ場がぴたりと重なった瞬間、演舞全体の説得力は一気に高まります。
私はよく、「曲を作っている」というより、演舞全体の見せ方を一緒に考えている感覚になります。そのため、緩急設計も音楽だけで完結させることはありません。常に踊りとの関係の中で考えています。
会場でどう聞こえるかを考える
そして、私が制作で特にこだわっているのが、本番環境でどう聞こえるかという視点です。これは17年間、数多くのよさこい楽曲を制作してきた中で強く感じてきたことです。
パソコンのスピーカーで聞く音。ヘッドホンで聞く音。そして大会会場で聞く音。これらは同じようでいて、実はまったく違います。特によさこいは屋外で演舞されることが多いため、室内でちょうど良く聞こえる音が、本番では痩せて聞こえることがあります。逆に、少し強めに感じる低音が、会場ではちょうど良くなることもあります。
だから私は制作中から、常に本番を想定しています。PCスピーカーで綺麗に聞こえるかではなく、会場で踊り子を支えられるか。観客の身体に届くか。屋外でも緩急が伝わるか。そうした視点で調整を行います。
静寂も同じです。室内では十分静かでも、会場ではほとんど感じられないことがあります。爆発も同じです。制作環境で強く感じても、屋外では埋もれてしまうことがあります。
だから私は、完成音源を作る時も、常にその先の景色を想像しています。踊り子がいて、観客がいて、会場の空気があって、その中でどう響くのか。
緩急設計とは、音楽理論だけではありません。実際の会場で感情がどう動くかを考えることだと私は思っています。
550曲以上の制作を通して積み上げてきた経験の多くは、まさにその部分にあります。だからこれからも、単に盛り上がる曲ではなく、演舞全体がより伝わる曲を目指して、一曲一曲向き合っていきたいと思っています。
依頼時のポイント|緩急を活かしたいなら伝えてほしいこと
どこを見せ場にしたいか
緩急設計を活かした楽曲を作るために、ぜひ最初に教えていただきたいのが、どこを見せ場にしたいのかということです。
よさこい楽曲は約4分という限られた時間の中で、観客や審査員の感情を動かしていきます。だからこそ、どこに最大の見せ場を置くのかによって、曲全体の設計が大きく変わります。
例えば、
- 序盤で一気に印象を残したいのか
- 中盤の転換点を見せたいのか
- 最後の大サビで全てを解放したいのか
同じチームでも考え方によって構成は変わります。
私は制作の際、「どこで一番拍手が欲しいのか」「どこで一番記憶に残したいのか」を意識しながら緩急を組み立てています。見せ場の位置が明確になるほど、静寂を入れる場所も、爆発を作る場所も自然に決まっていきます。
どんな感情を届けたいか
もう一つ重要なのが、どんな感情を届けたいのかです。同じ盛り上がりでも、目指す感情によって緩急の作り方は大きく変わります。
例えば、
- 感動を届けたいのか
- 熱狂を届けたいのか
- 切なさを表現したいのか
- 力強さを伝えたいのか
感動型であれば、静かな時間を長めに取り、余韻を活かす構成が効果的です。熱狂型であれば、短いブレイクから一気に解放するほうが強くなります。
切なさを表現したい場合は、音数を減らした場面や尺八・琴などの和楽器が効果を発揮します。力強さを出したい場合は、低音や和太鼓を活かした緩急設計が有効です。
実際のご依頼では、「感動させたい」「とにかく盛り上げたい」といった大まかなイメージでも十分です。その思いをもとに、一緒に整理しながら形にしていくことができます。
振付との連動
そして緩急設計で最も重要なのが、振付との連動です。よさこいは音楽だけでは完成しません。踊りと音楽が重なった時に初めて、本当の力を発揮します。
例えば、
- ジャンプを見せたい場面
- 隊形変化を見せたい場面
- 決めポーズを強く印象づけたい場面
こうした振付の見せ場が分かると、音楽側も最適な緩急設計ができます。
ジャンプの直前に静寂を入れるのか。隊形変化に合わせて一度音を抜くのか。決めポーズの瞬間に全楽器を解放するのか。音楽と振付がぴたりと重なった時、観客や審査員の印象は何倍にも強くなります。
逆に、音楽だけが盛り上がっていても、振付の見せ場と合っていなければ、その効果は半減してしまいます。
だから私は、制作の段階から振付との関係を非常に大切にしています。緩急設計とは音楽の話だけではありません。演舞全体の感情設計だと考えています。
見せたい景色や演出のイメージがあれば、ぜひ遠慮なく教えてください。その情報が、チームらしい「静寂」と「爆発」を作る大きなヒントになります。
まとめ
よさこい楽曲の緩急設計についてお話してきましたが、最後に一番大切なことをお伝えしたいと思います。それは、強さは音量ではなく落差によって生まれるということです。
大きな音を鳴らすこと。楽器を増やすこと。迫力を出すこと。もちろんそれらも重要ですが、本当に印象に残る演舞は、それだけでは成立しません。
静かな時間があるからこそ、爆発が強くなる。音を抜く勇気があるからこそ、次の一音が生きる。その落差が観客や審査員の感情を動かします。
つまり、静寂は弱さではありません。静寂は武器です。
そして爆発もまた、突然生まれるものではありません。期待を作り、溜めを作り、空気を整える。そうした準備があるからこそ、本当の意味でのクライマックスが成立します。
私は550曲以上の制作を通して、何度もその瞬間を見てきました。印象に残る楽曲ほど、緩急が丁寧に設計されています。
だからこそ、緩急設計は単なる音楽テクニックではありません。記憶を作るための設計です。
審査員の記憶に残るのは、大きな音そのものではありません。感情が動いた瞬間です。
静寂によって期待し、爆発によって解放される。その感情の流れこそが、演舞を記憶に残るものへ変えていきます。
曲が平坦に感じるチームの方へ
「盛り上がっているはずなのに印象が弱い」「迫力はあるのに記憶に残らない」そんな悩みがある場合、問題はメロディではなく、構成や緩急設計にあるかもしれません。
実際、音を増やしたり楽器を追加したりする前に、緩急を見直すことで大きく改善するケースは少なくありません。どこで落とすのか。どこで待たせるのか。どこで爆発させるのか。その設計によって、同じ演舞でも見え方は大きく変わります。
ソングメーカーでは、550曲以上のよさこい楽曲制作で培ってきた経験をもとに、チームごとの思いや演舞構成に合わせた楽曲づくりを行っています。また、修正回数に制限はありません。実際の制作では何度もすり合わせを行いながら、納得できる形まで調整していきます。
チームによって必要な緩急は異なります。だからこそ、一律の正解ではなく、そのチームに合った「静寂」と「爆発」を一緒に設計していきます。
もし今、「もっと印象に残る演舞にしたい」と感じているなら、ぜひお気軽にご相談ください。あなたのチームらしい感情の流れを、一緒に音楽へ形にしていければと思います。
ここまで読んで、少しでも「もっと演舞を印象的にしたい」と感じた方へ。
よさこい楽曲は、音を増やすことだけが正解ではありません。どこで待たせ、どこで解放するかによって、同じ演舞でも見え方は大きく変わります。
「今の曲をもっと良くできるだろうか」そんな段階からでも構いません。



コメント