
ソングメーカーには、難しい言葉でまとめた制作哲学や、立派に聞こえる経営理念があるわけではありません。
けれど、2008年の創業から18年間、1,300曲以上の音楽制作に向き合う中で、「これは大切にしたい」と考えるようになったことがあります。
その多くは最初から決めていたものではなく、お客様の話を聞き、曲を作り、やり取りを重ねながら一曲ずつ制作してきた中で、少しずつ形になってきたものです。
音楽には一つの正解があるわけではありません。作り手にとって良い曲と、依頼した方にとって良い曲が、必ずしも同じとは限らないからです。
だからこそ私たちは、まず話を聞き、その人が何を音楽にしたいのかを考えるところから始めます。
このページでは、主役は依頼者であること、作り手の好みを押しつけないこと、一緒に作品を作ること、そして音楽を作らせてもらえることへの感謝など、今のソングメーカーが仕事をするうえで大切にしている考え方をご紹介します。
主役は、音楽を依頼する人
私は音楽家として曲を作っていますが、依頼を受けて音楽を作るとき、主役は私ではありません。
主役は、その音楽を依頼してくださった方です。
オーダーメイドの音楽制作で目指しているのは、「井村らしい曲」を作ることではありません。
その方が何を音楽にしたいのか、誰に届けたいのか、どんな気持ちを残したいのか、どんな場面で使いたいのかを理解することから制作は始まります。
同じ「明るい曲」「感動する曲」でも、思い描くイメージや心を動かされるポイントは一人ひとり違います。
だからこそ、作り手側の価値観だけで「こちらの方が良い」と決めるのではなく、その人にとって何が大切なのかを考えながら音楽を形にしていきます。
私自身が前に出るよりも、完成した曲を聴いたときに、依頼した方が「これは自分たちの曲だ」と感じられること。その方の言葉や物語、気持ちが作品の中に残っていること。
作り手が目立つことより、その人の想いが音楽の中に残ることを大切にしています。
まず、話を聞くところから始めます
ソングメーカーでは、いきなり曲を作り始めることはしません。まず、その方が何を作りたいのか、どんな気持ちを音楽にしたいのかを聞くところから始めます。
「うまく説明できない」「伝えたいことはあるけれど言葉になっていない」といった段階でも問題ありません。その背景にある出来事、使う場面、届けたい相手などを一つずつ聞きながら、音楽の輪郭をつくっていきます。会話の中にある何気ないエピソードの中に、その曲で本当に大切にしたいものが隠れていることもあります。
私自身、うまく言葉にできない気持ちを抱えた経験があるからこそ、「きっとこういうことですね」と急いで結論を出さないようにしています。話していく中で、依頼した方自身が自分の想いに気づくこともあります。
曲を作る前に、その人の中にあるものを一緒に見つける。
それも、ソングメーカーの音楽制作の大切な工程と考えています。
音楽には、一つの正解がありません
1,300曲以上の音楽制作に携わってきて、強く感じるようになったのは、「音楽には一つの正解があるわけではない」ということです。
- ロックかクラシックか、複雑なコードかシンプルかといったジャンルや構成の優劣はありません。
- 明るい曲がふさわしいこともあれば、静かで切ない曲が選ばれることもあります。
- 世間一般で「売れそう」「評価されそう」な音楽が、そのご依頼にとっての正解とは限りません。
大切なのは一般的な評価だけで良し悪しを決めず、「世の中では何が良いとされているか」より、その方が何を良いと感じるのかを尊重することです。
メロディや構成、アレンジなどプロとしての提案は行いますが、それは一つの正解を押しつけるためではなく、依頼した方が大切にしているものをより良い形で音楽にするために使います。
「良い音楽とは何か」ではなく、「この人にとって良い音楽とは何か」を考えます。
作り手の好みを、正解にしない
作り手として私にも好きな音楽や得意な表現はありますが、依頼を受けて作る音楽では、作り手である私の好みをそのまま作品の正解にはしないようにしています。その曲は私のための作品ではないからです。
専門的に音楽を作っていると「こちらの方が音楽的に正しい」という考え方に寄ってしまうことがありますが、それだけで判断するのは避けるようにしています。依頼した方の背景、思い出、届けたい相手を知らずに決めつけてしまえば、その人のための音楽ではなくなってしまいます。
もちろん「こうするとイメージに近づく」「こちらの形も試してみませんか」といった提案は行います。
ただしそれは選択肢を増やし、その人にとってより良い形を一緒に探すためのものであり、押しつけるためではありません。
提案はします。でも、押しつけません。それが、オーダーメイドの音楽を作る側として大切にしている姿勢です。
一緒に作る
オーダーメイドの音楽制作では、言葉のイメージ(「明るく」「壮大に」など)の捉え方が人によって異なるため、最初の打ち合わせだけで完成形を100%共有することは簡単ではありません。
実際に音を聞いてみて初めて「もう少し静かな方が合いそう」「もっと力強くしたい」と気づくことも多く、それは極めて自然なことです。
だからこそソングメーカーでは、制作途中の音を聞いて感想を伺い、次の制作へ反映していくやり取りを重視しています。
修正は最初の制作が失敗したから行うのではなく、一緒に完成形へ近づいていくための大切な工程です。
お客様は「注文する人」、私は「言われたものを作る人」というだけの関係ではなく、一つの作品を一緒に完成させていく関係でありたいと考えています。
「良い作品」より、「その人にとって良い作品」を
演奏や歌唱の技術、コードの工夫、アレンジの洗練度など専門的な評価基準は存在しますが、オーダーメイドの音楽ではそれだけで価値が決まるわけではありません。
- 大切な人へ贈った曲を聴いて、家族が涙を流してくれた。
- よさこいチームが、「この曲なら自分たちらしく踊れる」と感じてくれた。
- 会社の社員が、自然と口ずさみ「みんなで歌いたい」と思ってくれた。
- 自分の言葉やメロディから作った曲を聴いて、「本当に自分の曲になった」と感じてくれた。
こうした価値は、楽譜や音源を分析するだけでは測れません。作り手が評価したくなる作品を目指すのではなく、その音楽がその人の目的の中でどんな役割を果たすのかを考えることが重要です。
作品の価値は、音楽だけの中で決まるものではありません。
だからソングメーカーでは、単に「良い作品」を作ることよりも、「その人にとって良い作品」を一緒に作ることを大切にしています。
音楽は、誰かの想いを届けるためにある
依頼を受けて作る音楽の重要な役割は、誰かの中にある想いを受け取り、それを別の誰かへ届けることです。
音楽はその間をつなぐ架け橋となります。
- よさこいの曲:チームの想いや物語を観客へ届ける
- 社歌・事業PRソング:会社の理念や想いを社員・お客様・地域へ届ける
- 個人のオリジナル曲:自分の中にある言葉や感情を形にし、自分や家族へ残す
- ギフトソング:なかなか言葉にできない気持ちを大切な人へ届ける
- 人生を残す音楽:個人の歩みや想いを、これからの家族へ伝える
音楽そのものが最終目的ではなく、誰かの想いを伝える手段であり、記憶を残す器であり、人と人をつなぐ媒介です。どんな曲を作るかだけでなく、
その音楽によって誰のどんな想いを誰に届けたいのかを大切にしています。
これが、今のソングメーカーの仕事を最もシンプルに表している言葉です。
作らせてもらえることへの感謝を忘れない
一曲の音楽制作を任せていただくことは、決して当たり前のことではありません。お金を払い、まだ形になっていないものを托してくださる背景には、かけがえのないお客様の信頼があると考えています。
私たちがお預かりするのは、チームの歴史、会社の創業理念、個人の方の夢、大切な人への気持ちなど、非常にプライベートで貴重な想いです。
だからこそ「仕事を受注した」という意識にとどまらず、その人が大切にしているものを預かり、音楽として形にする役割を任せていただいているという責任を感じています。
その感覚は「依頼だから作る」ではなく、「貴重なご縁をいただき、作らせていただいている」という感謝につながります。
18年間で積み重ねてきた1,300曲以上という実績も、お客様一人ひとりが大切な音楽を任せてくださった結果です。どれだけ制作数が増えても慣れで軽く扱わず、常に「一生残しておきたい大切な一曲になるかもしれない」という可能性を胸に向き合っています。
一曲を任せていただくことを、当たり前だと思わない。これは18年間変わっていないことの一つです。
18年間変わらなかったこと
ここまでご紹介してきた考え方は、創業時から用意していた理念ではなく、18年間お客様と向き合い一曲ずつ作っていく中で残ってきたものです。
- まず、話を聞くこと。
- 作り手の好みを押しつけないこと。
- 完成形を一方的に決めるのではなく、一緒に作っていくこと。
- 一般的な「良さ」ではなく、その人にとって何が良いのかを考えること。
- 一曲を任せてもらえることへの感謝を忘れないこと。
制作する音楽、使う技術、サービスの形が変わっても、誰かの想いに耳を傾け、その人のために音楽を作るという軸は変わりません。
これらの価値観を実際の制作現場でどのように守っているかについては、18年間変えなかったことで具体的にご紹介しています。
それが、ソングメーカーがこれからも大切にしていきたい仕事のあり方です。
