
みなさんこんにちは!ソングメーカー代表兼制作者、中小企業診断士の井村淳也です。
経営者の方とお会いするたびに思うこと。
採用難、人材定着難。そんな言葉が珍しくなくなりました。
そんな中、日々の業務に追われて人材確保のために割く時間もコストも余裕がない。そんな経営者が本当に多い。
――これは診断士として多くの現場で痛感することです。
こちらは私が中小企業診断士として代表を務める、ソング中小企業診断士事務所のホームページです。

人材が企業を選ぶ基準は、大きく変わりました。
給与や福利厚生、制度が整っていることは大前提。
そのうえで「ここで働く理由」を語れる企業だけが、応募者の心を動かします。
しかし現場では、こうした声をよく聞きます。
「採用ページに何を書けばいいかわからない」
「理念はあるが、言葉が抽象的すぎて伝わらない」
「面接で魅力を説明しても、なぜか刺さらない」
──その理由は、物語が語られていないからです。
人は「正しさ」ではなく「納得」によって動きます。
そして納得は、理念や数字ではなく、物語というかたちで受け取られるものです。
本記事では、企業の採用力を左右する「ストーリー設計」の本質について、
中小企業診断士としての現場支援と、
社歌・事業PRソングメーカーとして“感情を伝える表現”に携わってきた経験をもとに解説します。
あなたの会社は、どんな「物語」を語れていますか。
この記事を読むことで得られること
- 採用で「物語」が評価基準になる理由と、定番ワードが差別化にならない構造が整理できます
- 魅力が伝わる企業ストーリーの三層構造(創業理由・転換点・未来像)と語り方の要点がわかります
- 採用ページ・面接設計・社内共有への実装ステップと、音楽で“体温”を届ける使い方が見えます
まず結論:採用の決め手は「制度の良さ」ではなく、創業理由・転換点・未来像を自分の言葉で語り合える“企業の物語”です。
採用力を高める企業ストーリーの重要性とは
採用市場の価値基準が「物語」へとシフトしています
採用市場における “基準” は、確実に変わりました。
かつては 給与・待遇・安定性 が、企業選択の中心にありました。しかし、今の求職者──とりわけ若い層においては、その基準が 「自分はどんな環境で、どんな意味を持つ仕事をして生きていきたいのか」へ移行しています。
単に「条件が良いから働く」のではなく、
「その会社にいる自分を、好きになれるかどうか」が問われています。
情報があふれる時代において企業の差別化は難しくなっています
- 採用サイト、口コミサイト、SNS、社員ブログなど、企業は多様な情報を発信しています
- 企業説明資料も整っており、“正しい情報” はどこも似ています
- 「明るい社風です」「仲間を大切にします」「成長を支援します」などの言葉は、もはや差別化になりません
- 聞き慣れすぎていて、感情が動かないのです
応募者の心を動かすのは「共感できる物語」です
では、何が応募者の心を動かすのか。
それは 共感 です。
人は「正しい説明」ではなく、
「自分にも関係がある」と思える物語に心を動かされます。
- なぜその会社が生まれたのか
- どんな壁にぶつかり、それでも続けてきたのか
- そこで働く人は、何に誇りを感じているのか
こうした問いに答えるものこそが、その企業の 核となるストーリー です。
ここが語られていない企業は、応募者にとって 「何者でもない会社」 のままです。
組織文化は言語化されて初めて伝わります
中小企業診断士として、数多くの中小企業の採用現場に立ち会ってきました。
その中で、結果が出る組織には共通点があります。
それは、社員が自分の言葉で会社を語れるということです。
逆に、採用がうまくいかない組織ではこうなります。
- 「文化はあるけれど、言語化されていない」
- 「思いはあるが、言葉がフワッとしている」
- 「理念はあるが、現場で共有されていない」
つまり、存在しているが、伝わっていない。
このギャップこそが、採用における最大の損失です。
企業が語るべき「なぜここなのか」という理由
- どれだけ制度を整えても
- どれだけブランドデザインを洗練しても
- どれだけ設備投資をしても
「なぜここなのか」が語れなければ、人は残りません。
人が会社と関係を結ぶとき、求めているのは
「自分はここにいていい理由」 です。
その理由は 制度でも待遇でもなく、物語の中に宿る のです。
企業が採用で語るべき魅力的な物語の構造とは
企業の物語には型があり、思いつきでは伝わりません
採用において語られるべき「物語」は、思いつきで作るものではありません。
魅力的な物語には、必ず“型”があります。
この型を理解しないまま言葉だけを飾ると、抽象的で、誰にでも当てはまりそうな理念文になってしまいます。
これは、最も避けるべき状態です。
企業が語るべき物語の三層構造
創業の理由(Why it began)を語ることが出発点です
その会社が「なぜ」生まれたのか。
- 創業者が何に課題を感じたのか
- どのような理不尽、不合理、理想を見たのか
- 何を大切にしたいと思って、会社という形を選んだのか
ここにこそ、その企業の感情の出発点があります。
採用において、創業の語りが強い企業は例外なく魅力的です。
なぜなら、ここには 人の意思がある からです。
“最初の火”を語れる組織は強い。火は、誰かの心に移る。
乗り越えてきた転換点(Turning point)に意味を持たせる
会社は順風満帆ではありません。
どんな企業にも、必ず 「揺らいだ瞬間」 が存在します。
- 売上が落ち込んだ時期
- 組織がバラバラになりかけた局面
- 事業戦略を大きく切り替えた転換点
ここで重要なのは、事実ではなく 意味を語ること です。
たとえば──
「不況で受注が減った」それ自体はただの出来事です。
しかし、
「その時、私たちは“誰に役立ちたいのか”を問い直した」
と語られた瞬間、出来事は 意味を持った物語 へと変わります。
人は「葛藤」に共感し、「決断」に敬意を払います。
このポイントを押さえるだけで、物語は立ち上がります。
向かうべき未来像(Future narrative)は居場所の予告です
最後に語るべきは、これからどこを目指すのか。
注意すべきは、大きな夢を語る必要はない ということです。
- 「地域にとって必要な企業であり続けたい」
- 「技術を次世代に残したい」
- 「お客様にとっての“最初に相談する相手”になりたい」
このような、具体的かつ地に足のついた未来像が、
求職者に「自分の役割のイメージ」を与えます。
未来像は企業の希望ではなく、
そこに関わる人の“居場所の予告” であるべきなのです。
三層をつなぐのは経営者自身の言葉です
どれほど構造を整えても、
経営者自身の言葉で語られていなければ伝わりません。
- 整えられすぎたコピー
- コンサルが作った抽象的な言葉
- “きれいに言おうとした”理念文
これらはすべて、心に残りません。
なぜなら、温度がない からです。
人は、完璧な言葉ではなく、
揺らぎを含んだ「語り」に共感する のです。
社歌・PRソングが“本質的に効く”のはここです。
言葉になり切らない思いを、音と言葉の一体で届けられるからです。
採用現場に活かす企業物語の表現技術
物語は語れる状態になって初めて採用に効力を発揮します
企業の物語は「語れる状態」になって、はじめて採用に効きます。
どれほど理念が良くても、経営者が熱を込めて話しても、
それが現場のコミュニケーションに乗らなければ、定着も共感も生まれません。
ここでは、物語を採用プロセス全体にどう配置していくかを考えていきます。
採用ページに意味を宿す:事実ではなく“意味”を見える形にする
多くの採用ページは「会社紹介」「事業内容」「募集要項」で終わっています。
しかし、求職者はすでに事実の情報は知っていることが多いのです。
そこで必要なのは、次の3点です。
| 観点 | 内容 | 効果 |
|---|---|---|
| 創業理由 | なぜ始めたのか | 応募者の「共感スイッチ」が入る |
| 転換点 | どんな選択をしてきたのか | 経営の“芯”が伝わる |
| 未来像 | これからどこへ向かうのか | 応募者が自分を重ねられる |
ポイントは、「説明する」のではなく「語る」ことです。
例えば、創業者インタビューを文章化する場合でも、
言い慣れた綺麗な表現ではなく、その人の語彙・息遣い・言いよどみまで残す。
「その会社らしさ」は、文章の中の粗さに宿ります。
それを削り落とさないことが重要です。
面接設計:候補者に“自分の物語”を語ってもらう
良い会社は、面接を企業が“評価する場”にしていません。
むしろ、「互いの物語を交換する場」にしています。
使える問いは、例えばこうです。
- 「あなたは、どんな場で力を発揮してきましたか?」
- 「仕事で大切にしている価値観を、エピソードで教えてください。」
- 「なぜ今、このタイミングで転職を考えているのですか?」
これは、単に情報を得るための質問ではありません。
候補者の物語と、会社の物語の“接点”を探すための問いです。
企業が語るのは「構造化された物語」。
応募者に語ってもらうのは「これまでと、これから」。
その交差点で「共に働く必然」が立ち上がります。
社員が語れる状態をつくる:ナラティブ共有の設計
ここが最も重要です。
採用は、経営者だけが語れても不十分です。
強い組織は、次の状態が実現しています。
- 誰が話しても、伝わる物語の「骨格」が同じ
- 言い回しは違っても、語られる価値観はブレない
- “自分の言葉”で語っている
これは、スローガンではなく、共有されているナラティブです。
実務では、次の順番で作ります。
- 経営者が物語の原型を語る
- その物語を「言葉の地図」として構造化する
- 社員自身が「自分と会社の関係」を語るミーティングを設計する
- 全員が語れる“型”を持つ
この段階で、はじめて組織は文化として自走し始めます。
社歌・PRソングの役割:言語化できない“体温”を共有する
物語は、すべて言語化できるわけではありません。
むしろ、企業の魅力の核心は言葉になりきらない領域に宿っています。
- 一緒に働く人の表情
- 現場に流れる空気
- その仕事に向き合うときの姿勢
これらを最短で共有できる手段が“音楽”です。
音楽は、頭ではなく身体感覚に届く。
「わかった」ではなく、「感じた」へ連れていく。
だから社歌は、採用・オンボーディング・社内浸透の“背骨”になりうるのです。
まとめ:物語は人と組織をつなぐ“温度”です
採用とは、条件を提示し、人を選ぶ行為ではありません。
その会社の中に流れる想いの温度を、未来の仲間へ手渡す営みです。
企業にはそれぞれの始まりの理由があり、
歩んできた葛藤の季節があり、
まだ見ぬこれからの物語があります。
それは本来、
「上手に伝えよう」と力を入れて飾る必要のあるものではなく、
ただ、そこにあるものです。
しかし、言葉にされなければ、伝わりません。
伝わらなければ、共に歩む仲間は現れません。
語るという行為は、
自分たちが何を信じてここにいるのかを、
あらためて確かめる行為でもあります。
そして、
その言葉になりきらない部分──
表情や、空気や、息遣いのようなもの。
その領域をまっすぐに届けられる手段こそ、音楽です。
音楽は、想いの輪郭をそっと灯し、
まだ名前のつかない価値を、心に置いていきます。
「この会社で働きたい」
その感情が生まれる瞬間には、
必ずその人の心の中で何かが共鳴しています。
物語は、人と組織をつなぐ“温度”です。
それは、言葉と音のあいだに宿ります。
あなたの会社の物語は、
どんな音で、どんな呼吸で、誰に向かって響いていくのでしょうか。
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