
みなさんこんにちは!ソングメーカー代表兼制作者、中小企業診断士の井村淳也です。
経営者の方とお会いするたびに思うこと。
多くの「人」が集まり、動かしていく組織の中で、その思いが一つになり、共感が生まれるとき、理屈では説明できないようなパワーがうまれることがある。
――これは診断士として多くの現場で痛感することです。
こちらは私が中小企業診断士として代表を務める、ソング中小企業診断士事務所のホームページです。

人は「正しい」から動くのではありません。
「自分ごとだ」と感じたときに、はじめて心が動き、行動が生まれます。
経営の現場でも同じです。
理念を掲げても、ビジョンを語っても、なかなか社員が行動に移さない。
その背景には、“共感”を生み出す仕組みの欠如があります。
診断士として多くの組織を見てきて感じるのは、
人が行動するには、必ず「心のスイッチ」を押す何かがあるということ。
それは理論や論理ではなく、もっと深いレベルの“心理的共鳴”です。
この記事では、音楽家であり診断士でもある筆者の経験から、
人が共感し、行動へとつながる3つの心理要因──
「自己投影」「安心感」「期待の共有」──を解き明かします。
社員が“動きたくなる組織”をどう設計するか、その核心に迫ります。
この記事を読むことで得られること
- 共感が行動に変わる心理メカニズム(「自己投影」「安心感」「期待の共有」)が理解できます
- 理念を「説明」から「体験」へ翻訳する方法(物語化・音楽活用・余白設計)がつかめます
- 現場での実装の一歩(安心感の可視化、期待の見える化、「任せる」設計)が明確になります
まず結論:人は“正しさ”では動きません。自己投影できる物語と、安心して期待を託される場が整ったときに自走が生まれる――共感は設計できる経営資源です。
自己投影で共感を生むブランディングと音楽活用
共感の成立は自分を重ねられる物語があるかどうか
人が何かに共感するとき、それは“自分の物語”をそこに見つけた瞬間です。
たとえば映画を観て涙を流すのは、登場人物の感情に自分を重ねているから。
同じように、企業の理念やメッセージに心が動くのも、
「自分にもこうなりたい」「この考え方は自分に近い」と感じるからです。
企業ブランディングにおける最大の課題は、
理念を伝えることではなく、「共感できる物語」に変換することです。
理念がいくら正しくても、そこに“自分ごと化”の余地がなければ、
人は行動へとつながりません。
理念を語るから映すへと変換する設計
理念を“語る”から、“映す”へ
多くの企業では、理念を説明することに時間をかけます。
しかし、説明された理念ほど、人の心には残りません。
なぜなら人間の脳は「情報」よりも「物語」に反応するようにできているからです。
たとえば、「挑戦を恐れず前進しよう」という言葉を掲げる企業があるとします。
その理念をただ掲げるだけでは、社員の行動は変わりません。
しかし、「過去にどんな挑戦があったのか」「失敗をどう乗り越えたのか」を
具体的なストーリーとして共有した瞬間、理念は生きた言葉になります。
社員が「その時の自分なら同じように悩んだかもしれない」と感じるとき、
そこに自己投影が生まれ、理念が“自分のもの”になるのです。
この状態を作れた組織は、上からの指示がなくても自発的に動き始めます。
音楽が果たす感情の翻訳者としての機能
音楽が果たす“感情の翻訳者”としての役割
自己投影を促すためには、理屈では届かない感情の層にアクセスする必要があります。
ここで音楽が大きな力を発揮します。
音楽には、言葉を越えて「感情を共鳴させる力」があります。
社歌や事業PRソングを活用することで、理念を抽象的な概念から“体感できる空気”へ変換できる。
たとえば、「一歩を踏み出す勇気」という理念をメロディに乗せると、
社員一人ひとりが“その瞬間の自分”を思い浮かべながら聴くことができるのです。
診断士として多くの企業を支援してきましたが、
理念の浸透に成功している企業の多くは、「言葉」と「体感」の両輪を設計しています。
理念を会議室で唱えるのではなく、音楽や映像を通じて感情で理解させる。
つまり、“頭で納得させる前に、心で感じさせる”設計です。
音楽は理念の翻訳者。
そして、社員一人ひとりの中にある“個人の物語”と、
企業が描く“大きな物語”を結びつける架け橋でもあるのです。
自己投影を促すための余白設計の重要性
自己投影を促す「余白」を設計する
ここで重要なのは、すべてを説明しすぎないことです。
人は自分の経験を投影する余白があるときに、より深く共感します。
たとえば、映像に出てくる一人の社員の笑顔。
その背景にどんなストーリーがあるのかを語り尽くさないことで、
見る人がそれぞれの「自分の記憶」を重ねることができる。
音楽制作においても同じです。
すべてを語る詞よりも、聴く人が想像できる余白を残す詞の方が、
長く心に残ります。
これは経営にも通じます。
リーダーがすべての答えを言い切ってしまう組織は、思考が止まりやすい。
一方、「この理念の中に、あなた自身の物語を見つけてほしい」と伝える組織は、
社員が自ら考え、動き、創造するようになります。
診断士の現場で観察した共感が生まれる瞬間の事例
診断士の現場で見えた「共感が生まれる瞬間」
ある製造業の企業で、社内改革プロジェクトを支援した際のことです。
経営者が「新しい挑戦を恐れない文化を作りたい」と語っていましたが、
現場の社員からは「どうせまた口だけで終わる」と冷めた声が上がっていました。
私は、まず経営者自身の過去をヒアリングし、
「実は私も過去に失敗して怖くなったことがある」というエピソードを引き出しました。
その話を社内ミーティングで共有すると、空気が一変。
社員が「社長も同じ人間なんだ」と感じ、
翌週には自発的に新提案をするメンバーが現れました。
つまり、“自己投影”とは「他者の物語の中に、自分を見つける行為」です。
経営者の誠実な言葉、社員の努力、音楽の旋律──それらが重なり合ったとき、
理念は「自分の人生の一部」として浸透していくのです。
心理的安全性の設計で共感を持続させる 組織の安心感デザイン
共感は安心感がなければ続かないという前提
人は、不安な環境では共感できません。
どんなに理念が素晴らしくても、どんなにビジョンが魅力的でも、
そこに「安心して自分を出せる空気」がなければ、心は閉ざされたままです。
つまり、“共感の土台”とは心理的安全性です。
この基盤がなければ、共感は一過性の感情に終わり、行動へとつながらない。
診断士として数多くの現場を見てきた経験からも、
共感を「維持」できる組織とそうでない組織の決定的な違いは、
この「安心感の設計」にあります。
否定されない空気が創造性を呼び込む仕組み
1. 否定されない空気が創造性を呼び込む
心理的安全性とは、「何を言っても大丈夫」という安心感です。
しかしそれは、単に“仲良しの関係”を作ることではありません。
重要なのは、「自分の意見を出しても、攻撃されない」という信頼のルールを
組織の文化として根づかせることです。
たとえば、会議の場で若手がアイデアを出したとき、
上司が「それは無理だ」と即座に否定すれば、以後その人は発言を控えます。
一方で「面白い視点だね。その意図をもう少し教えて」と受け止める上司がいると、
場の空気がやわらぎ、次々と意見が出てくるようになります。
この「安心して試せる空気」が、組織に創造性をもたらします。
音楽でいえば、セッションの場で自由に即興演奏できる状態。
誰かが間違えても責められず、むしろその“偶然の音”を活かそうとする空気。
それが“心理的安全性が高いバンド”です。
経営においてもまったく同じ。
一人の挑戦を責める空気ではなく、
「挑戦したこと自体を称賛する文化」がある企業ほど、成長スピードが速いのです。
安心感を数値化して可視化する視点
2. 「安心感」を数値化する視点を持つ
心理的安全性は“感覚的な話”として扱われがちですが、
実際には定量的にも測定できます。
たとえば、「会議で自由に意見を言えると思うか」「ミスを報告しやすいか」など、
社員アンケートで可視化することで、
どの部署に安心感が足りないかを把握することが可能です。
診断士として支援する際も、私はこの「見えない空気」を数値化することを重視します。
データで示すことで、経営層も“感情論ではない”と理解できる。
そして、課題の特定と改善が進みやすくなるのです。
特に、上司・部下間の「双方向性」のデータは重要です。
上司は「十分コミュニケーションを取っている」と感じていても、
部下側では「聞いてもらえていない」と思っていることが多い。
このズレを可視化することが、心理的安全性の第一歩になります。
音楽を使って安心感をデザインする方法
3. 音楽的な「安心感」をデザインする
音楽の演奏現場を見ても、安心感のあるチームほど良い演奏をします。
リハーサル中に小さなミスをしても、メンバーが笑って受け止めるバンド。
その空気が本番での伸びやかな表現を引き出します。
この「安心して表現できる空気」を、企業の中にも作ることができます。
それが「音楽を用いた心理的安全性のデザイン」です。
社歌や事業PRソングの制作過程に、社員自身が関わることで、
「自分の想いが形になる」という経験が生まれる。
それが、安心感と誇りを生み出す源泉になります。
ある企業では、社員が自ら作詞に参加しました。
「普段は口に出せないけれど、歌詞なら言える」という声が多く、
そのプロセスが社内の雰囲気を劇的に変えました。
「安心して発信できる場」が音楽を通して可視化されたのです。
音楽は、感情を“安全に共有する器”です。
だからこそ、理念浸透やチームビルディングの文脈でも大きな効果を発揮します。
安心感が生み出す信頼と挑戦の循環
4. 安心感の次に訪れる「信頼」と「挑戦」
心理的安全性は、ゴールではありません。
それは、挑戦への出発点です。
安心感があるからこそ、人はリスクを取る。
「失敗しても受け止めてもらえる」と感じるからこそ、新しい一歩を踏み出せる。
この“安心→挑戦”の循環こそが、共感を持続させる仕組みです。
診断士として関わる現場では、
この循環が生まれた瞬間に「組織の空気」が変わるのを何度も見てきました。
社員の表情が明るくなり、会議のトーンが軽くなる。
やがて、理念がスローガンではなく“合言葉”になる。
つまり、安心感とは「挑戦の場を開くための土台」であり、
その上にこそ、共感は根を張っていくのです。
期待の共有で人を動かす 共感が行動に変わる瞬間をつくる方法
人が行動に変わるのは期待を感じた瞬間です
人が本当に行動するとき、それは「期待されている」と感じた瞬間です。
そして、その“期待”が一方通行でなく、互いに共有されたとき、
共感は単なる感情ではなく、「力」になります。
経営の現場で何より重要なのは、社員が「自分の行動が組織の未来につながっている」と感じること。
つまり、「自分がここにいる理由」を実感できることです。
それを生むのが「期待の共有」です。
任されているという信頼が生み出す推進力
1. 「任されている」という信頼が生み出す推進力
共感が行動に変わらない組織の多くは、
メッセージの発信はあるのに、“信託”がない。
つまり、社員に「任せる」という行為が欠けているのです。
経営者がどれだけ理念を語っても、社員が「どうせまた上が決める」と思っていれば、
その理念は行動にはつながりません。
反対に、「あなたに任せる」と言われた瞬間、
人は責任感と誇りを持って自分の力を発揮しようとします。
これは診断士として多くの企業で見てきた構造的な事実です。
“共感”は、受け取るだけでは長続きしない。
行動を伴うためには、必ず「任されている」という実感が必要です。
あるサービス業の現場で、私は店長会議の最後にこう伝えました。
「今日出たアイデアのうち、どれか一つは必ず現場で“あなたの名前で”実行してください」
翌月の会議では、各店長が誇らしげに報告をしていました。
それは、承認よりも前に“期待された”経験があったからです。
期待を見える化して設計する重要性
2. 組織に必要なのは「期待の見える化」
“期待の共有”は感情論ではなく、設計できる仕組みです。
たとえば、目標設定の場で「数字目標」だけを共有するのではなく、
「この仕事を通して、あなたに何を期待しているか」を明文化する。
それを上司だけでなくチーム全体で共有する。
これが“見える期待”です。
「何を求められているのか」が明確になった瞬間、
社員の意識は「やらされている」から「応えたい」に変わります。
私は支援の現場でよく、「数値はKPI、期待はKVI(Key Value Indicator)」と呼んでいます。
つまり、行動を動かすのは数値ではなく“価値の指標”です。
その価値を共有できたとき、人は自ら動き始めるのです。
また、音楽の世界でも同じ構造が見られます。
合奏では、指揮者が「正確に演奏してほしい」と言うよりも、
「この一節を“祈りのように”奏でてほしい」と伝える方が、演奏者は生き生きと動く。
人は、指示よりも“期待”に反応する生き物なのです。
音楽で期待を体験化する事例
3. 音楽で「期待」を体験化する
事業PRソングや社歌の制作は、まさに“期待の共有プロジェクト”です。
制作過程で社員の声を集め、企業の未来像を歌詞に反映させる。
すると、その曲を聴いた人は「この会社はこうありたい」と同時に、
「自分もその一員として貢献したい」と感じるようになります。
ある企業では、完成した社歌を初めて全社員で聴いた瞬間、
涙を流す人が続出しました。
その理由を尋ねると、「歌詞に自分の想いが入っているから」との答え。
それは、“期待されている”と“認められている”の両方を感じたからです。
音楽には、目に見えない期待を「感じられる形」にする力があります。
会議で共有するよりも深く、心の奥に届く。
この体験が、人の行動を変える原動力になります。
診断士視点での期待の設計と違い
4. 診断士視点で見る「期待の設計」
コンサルティングの現場では、
「指示と期待を混同している組織」が少なくありません。
指示は「やってほしいこと」、期待は「なってほしい姿」。
この二つを明確に分けるだけで、社員のモチベーションは劇的に変わります。
たとえば、上司が「数字を上げてほしい」と言うのは指示です。
しかし、「あなたなら、このお客様を喜ばせられるはず」という言葉には期待がある。
この“期待の言語化”が、組織に熱を生む。
診断士として、私はこの構造を「モチベーションの調律」と呼んでいます。
音楽で言えば、テンポ(スピード)を指示するだけではなく、
曲全体の“グルーヴ”を共有すること。
経営も同じで、数字だけではなく「どんな空気を奏でたいか」を
経営層と現場が共に感じることが重要なのです。
共感が行動に変わる瞬間の本質
5. “共感”が“行動”になる瞬間
共感が行動に変わるのは、
「自分がその物語の登場人物である」と確信したときです。
理念を理解した瞬間ではなく、
その理念に“自分の期待が込められている”と感じた瞬間。
社員が「この会社の未来を、自分が担っている」と実感したとき、
組織ははじめて“自走”します。
これは経営の理想論ではなく、
実際に多くの企業が体験している“変化のプロセス”です。
音楽が流れ出すように、
人の行動も「期待が響く場」から自然に生まれていくのです。
共感設計が組織を動かす 理念浸透と行動を生む心理の仕組み
共感は設計によって組織を動かす経営資源である
企業を動かすのは、人であり、人を動かすのは「共感」です。
しかし、その共感は決して偶然に生まれるものではありません。
経営の現場で成果を上げる企業は、例外なく“共感を設計している”のです。
ここまで見てきた三つの心理要因──「自己投影」「安心感」「期待の共有」──は、
いずれも人の心の奥で作用し、行動へとつながるスイッチを押します。
理念を「自分ごと」に変える自己投影。
挑戦を支える土台となる安心感。
未来を共有することで生まれる期待。
この三つがそろったとき、組織の空気は変わります。
共感を意識設計から体験設計へ転換する必要性
共感を「意識設計」から「体験設計」へ
多くの企業が誤解しているのは、共感を「意識改革」として扱ってしまうことです。
言葉で説得しても、人は変わりません。
変わるのは、体験したときです。
だからこそ、“体験としての共感”をどう作るかが鍵になります。
音楽や映像、物語、対話──これらはすべて、体験を通じて心を動かす装置です。
たとえば社歌や事業PRソングのような取り組みは、
理念を「音」として体感させ、感情の記憶として残します。
それは、単に耳に残るメロディではなく、
社員一人ひとりの「自分の想いが企業と重なる瞬間」そのもの。
まさに、共感を構造として“届ける”手段なのです。
共感は経営資源であるという診断士の実感
診断士としての実感──共感は経営資源である
経営コンサルティングの現場で見てきた成功企業には、
数字や仕組みの前に、必ず“人の共感”がありました。
共感のある組織は、意思決定が速く、離職率が低く、挑戦が続く。
それは偶然ではなく、心理的な仕組みとして再現可能なものです。
私はこれを「共感資本」と呼んでいます。
財務資本や人的資本と同じように、共感は投資対象であり、
磨けば必ずリターンを生む“経営資源”です。
しかもその価値は、危機のときにこそ発揮される。
共感によってつながった組織は、外部環境が変わっても、崩れません。
音楽がもたらす共鳴経営という未来像
音楽がもたらす「共鳴経営」の未来
音楽は、人の心を同じテンポで動かすことができます。
それは言葉を超えた“共鳴”の力です。
社歌・事業PRソングというのは、ただのPRツールではありません。
理念を“感情で理解させる”ための経営デザインそのものです。
メロディが流れる瞬間、社員の心に一体感が生まれ、
組織全体が同じリズムで動き出す。
私は、これを「共鳴経営」と呼んでいます。
経営とは、数字を動かすことではなく、人の心を整えること。
そのために、音楽ほど本質的な手段はない。
行動する組織の条件と三要素の整理
行動する組織の条件
最後にもう一度、共感が行動に変わる構造を整理します。
– 自己投影 ─ 理念や物語の中に自分を見つける。
– 安心感 ─ 自分を出しても受け止められると感じる。
– 期待の共有 ─ 自分の存在が未来とつながっていると実感する。
この三つがそろうと、人は自然に動き出します。
共感を「伝える」ではなく、「設計する」。
それが、これからの経営における最重要テーマです。
診断士として、そして音楽家として、
私はこの“共感設計”を言葉と音の両面から支援していきます。
人の心が動けば、組織は動く。
理念が響けば、数字が変わる。
その瞬間を、これからも企業と共に創り続けていきたいと思います。



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