
皆さんこんにちは!ソングメーカー代表、井村淳也です。
今回ご紹介するのは、広島県尾道市の市民の歌をアレンジ・音源制作させていただいた事例です。
尾道市は平成30年4月1日に市制施行120周年を迎えられ、その節目のプロジェクトの一環として、「尾道市の歌」を新たな形で届け直す機会をいただきました。
市民の歌や社歌のような楽曲は、ただ残っているだけでは十分ではありません。
譜面や記録として保存されていても、実際に歌われなくなり、親しまれなくなった時点で、その価値は少しずつ薄れていきます。
だからこそ大切なのは、伝統をそのまま保存することではなく、今の時代にも真っ直ぐに届く形へと再設計することです。
私は今回の制作を通じて、アレンジとは単に音を整える作業ではなく、受け継がれてきた「アイデンティティ(想いの核心)」の魅力を損なうことなく、これから先の世代にも自然に口ずさんでもらえる状態へと導く“届け方の設計”だと改めて感じました。
この記事では、今回の尾道市の歌のアレンジ事例を通じて、伝統を「生きた資産」に変えるために必要な考え方と、100年先も口ずさんでもらうための音響設計についてお伝えしていきます。
市民の歌は「保存」ではなく「活用」されて初めて価値になる
市民の歌や校歌といった公共的な楽曲は、多くの場合「大切に残すもの」として扱われます。
もちろんそれ自体は重要なことですが、保存されているだけでは、本当の意味で価値があるとは言えません。
なぜなら音楽は、聴かれ、歌われ、共有されてはじめて機能するものだからです。
どれだけ美しい旋律であっても、誰にも歌われなくなった瞬間に、その存在は少しずつ日常から離れていきます。
これは経営におけるブランド資産と同じ構造です。
ロゴや理念が存在していても、それが現場で使われていなければ意味を持たないのと同様に、
市民の歌も「使われている状態」でなければ資産とは言えません。
実際、長い年月を経た楽曲ほど、
「知ってはいるが歌ったことがない」
「存在は分かるが、日常では触れていない」
といった状態になりやすい傾向があります。
これは決して楽曲の価値が下がったわけではなく、
“届け方が現在の環境に合っていない”ことによって起こる現象です。
だからこそ重要なのは、単に残すことではなく、
今の時代の中で自然に触れられ、口ずさまれる状態を設計することです。
例えば、
イベントでの活用、学校教育での接点、地域プロモーションとの連動など、
さまざまな形で「使われる場面」を生み出すことで、
楽曲は再び人々の記憶と結びついていきます。
市民の歌とは、記録として存在するものではなく、
人の中で生き続けることで価値を持つ存在です。
そしてそのためには、
音楽そのものだけでなく、
どのように届け、どのように使われるかまで含めた設計が不可欠なのです。
なぜリメイクが必要だったのか|120周年という転換点
今回のプロジェクトは、広島県尾道市が市制施行120周年を迎えるという大きな節目に行われました。
このような節目は、単なる記念行事ではなく、これまでを振り返り、これからを再定義する重要な機会でもあります。
長い歴史の中で受け継がれてきた市民の歌は、
地域の記憶や誇りを象徴する存在です。
しかし同時に、そのままの形で維持するだけでは、
現代の生活や価値観との間に少しずつ距離が生まれてしまうこともあります。
だからこそ今回のリメイクは、
過去を否定するものではなく、未来へと接続するための再設計として位置づけられるものです。
もともとの旋律や歌詞が持つ価値を尊重しながら、
現代の音環境や聴取体験に合わせて届け直す。
そのことによって、次の世代にも自然に受け継がれていく状態を目指します。
特に尾道市のように、歴史と文化が色濃く残る地域においては、
伝統を守ることと、新しい価値を生み出すことの両立が求められます。
その中で音楽が果たす役割は大きく、
過去と現在、そして未来をつなぐ媒介として機能します。
行政の取り組みにおいても、
単に情報を伝えるだけでなく、
地域の空気や想いを共有することが重要になっています。
音楽は、その両方を同時に実現できる数少ない手段の一つです。
今回のリメイクは、
120年という時間の積み重ねを尊重しながら、
これからの100年に向けて、どのように届けていくかを考えるプロジェクトでもありました。
アレンジとは「壊さずに変える」高度な設計である
今回のような市民の歌や校歌といった楽曲のアレンジにおいて、
最も難しいのは「どこまで変えてよいのか」という判断です。
もともとの楽曲には、長い時間をかけて育まれてきた価値があります。
旋律の美しさ、展開の流れ、そこに込められた想い。
それらは単なる音の組み合わせではなく、地域の記憶として積み重なってきた資産です。
だからこそ、アレンジによってそれらを損なってしまえば、
楽曲の価値そのものを弱めてしまう可能性があります。
一方で、何も変えずにそのまま残すだけでは、
現代の音環境や聴取スタイルの中では埋もれてしまうこともあります。
つまりアレンジとは、
「守る」か「変える」かの二択ではなく、その両立を図る設計なのです。
具体的には、
・旋律の魅力を最大限に引き出すこと
・現代の音として自然に聴ける質感に整えること
・新しい要素を加えながらも、違和感なく受け入れられること
これらを同時に成立させる必要があります。
ここで求められるのは、単なる音楽的な技術ではなく、
どこを変え、どこを変えないかを見極める判断力です。
ほんの少しの音色の違い、アレンジの方向性の違いによって、
「現代的で親しみやすい音」にもなれば、
逆に「原曲の良さが薄れてしまう音」にもなり得ます。
その意味でアレンジは、
感覚的な作業ではなく、極めて繊細なバランスの上に成り立つ設計行為と言えます。
中小企業診断士の視点で見れば、
これは既存事業のリブランディングにも近い構造です。
強みを残しながら、時代に合わせて再構築する。
その“さじ加減”こそが成果を左右します。
アレンジとは、
楽曲を変える作業ではなく、
その価値を損なうことなく、より伝わる形へと再設計するプロセスなのです。
今回の設計思想|“主役は歌”という判断
今回のアレンジにおいて最も重要な判断は、
「何を主役にするか」という点でした。
市民の歌という性質を考えたとき、
最終的に人々の中に残るのは、演奏そのものではなく「歌われること」です。
どれだけ美しい伴奏であっても、
歌が埋もれてしまえば、その楽曲は日常の中で機能しません。
だからこそ今回は、
“主役は歌である”という前提を明確にしたうえで、全体を設計しています。
具体的には、ご要望でもあった「ピアノメインのオーケストラアレンジ」をベースにしながら、
・旋律の美しさが自然に際立つ構成
・ピアノとオーケストラのバランス調整
・歌が最も伝わる帯域・音量設計
といった点を意識し、
伴奏が主張しすぎず、しかし支えとしてしっかり機能する状態を目指しました。
また、弦楽器を中心とした構成とすることで、
柔らかさや広がりを持たせつつ、
歌のニュアンスが埋もれないように設計しています。
ここで重要なのは、
音を足すことではなく、どの音をどの役割で配置するかという考え方です。
すべての音が前に出てしまえば、結果として何も伝わらなくなります。
逆に、役割が整理されていれば、
シンプルな構成でも十分に豊かな表現が可能になります。
これは、CMソングやブランド設計とも共通する構造です。
誰に何を伝えるのかを明確にし、
そのために必要な要素だけを配置する。
今回のアレンジにおいても、
「歌を中心に据える」という一つの軸を決めたことで、
全体の設計が一貫したものになりました。
音楽制作において重要なのは、
すべてを表現することではなく、
最も伝えるべきものを際立たせる構造をつくることなのです。
なぜ音楽は100年残るのか|時間を超えるメディアの特性
今回アレンジを行う中で、改めて強く感じたのは、
音楽は時間を超えて残り続ける特性を持っているということでした。
実際に触れた旋律は、かなり古い時代に作られたものであると伺いましたが、
編曲を進める中で、その美しさや展開に思わず引き込まれる瞬間が何度もありました。
なぜ音楽は、これほど長い時間を経てもなお、人の心を動かすのでしょうか。
その理由の一つが、メロディの普遍性です。
優れた旋律は、時代や環境が変わっても、
人が「心地よい」と感じる構造を持っています。
それは理屈だけでは説明しきれない部分もありますが、
人間の感覚に深く根ざしたものであり、
だからこそ世代を超えて受け入れられ続けます。
さらに重要なのが、感情と結びつく記憶です。
音楽は、ある特定の場面や出来事と強く結びつきます。
例えば、
・子どもの頃に聴いた歌
・行事や節目で流れた音楽
・誰かと共有した時間の中で印象に残った旋律
こうした記憶は、音楽とともに蓄積され、
再びその音を聴いたときに一気に呼び起こされます。
つまり音楽は、
単なる情報ではなく、「体験そのもの」として記憶されるメディアなのです。
そしてもう一つの特性が、
言葉を超えて伝わる力です。
言語は時代や文化によって変化しますが、
音楽が持つ感情的なニュアンスは、
その壁を越えて共有されることがあります。
だからこそ、音楽は地域や世代を超えて受け継がれ、
長い年月の中でも価値を失いにくいのです。
今回の市民の歌も、
こうした特性を持つからこそ、
長い時間を経てもなお人の心に響き続けてきました。
そしてアレンジという形で現代に届け直すことは、
その価値を単に維持するのではなく、
これからの100年に向けて再び機能させる行為でもあります。
音楽は、
過去の遺産ではなく、
未来へとつながる“生きた資産”なのです。
「良い歌はあるのに、今はあまり使われていない」
その状態は、価値がないのではなく、
“今の届け方に合っていない”だけかもしれません。
診断士視点:伝統を資産に変えるには“再設計”が必要
ここまで見てきた内容を、中小企業診断士の視点で捉えると、
今回の取り組みは単なる楽曲制作ではなく、
伝統を「資産」として機能させるための再設計と言えます。
「伝統がある」「理念がある」という状態は、それだけでは価値を生みません。
むしろ、長く続いているがゆえに、
現代の生活や価値観との間にズレが生まれ、
「額縁に飾られているだけで、誰も日常で意識していない(活用されていない)」という状況に陥ることも少なくありません。
これは企業における既存事業やブランド、そして形骸化した社歌と全く同じ構造です。
過去に評価された強みや想いであっても、
現在の顧客や社員に届く形で再構築されていなければ、
徐々に組織の求心力を失っていきます。
だからこそ必要になるのが、「再設計」という視点です。
重要なのは、伝統を壊すことではありません。
その言葉や旋律が持つ本来の熱量を保ったまま、現代に適合する形へと再構築することです。
中小企業診断士として現場を見ていても、
「素晴らしい理念や歴史を持っているのに伝わっていない」ケースは非常に多く、
その多くは内容ではなく届け方の設計の問題によって起きています。
今回のように、音の質感や構成を現代に合わせて再設計することで、
忘れられていた歌は再び「組織や地域の共通言語」として機能し始めます。
伝統も想いも、再設計されてはじめて“使われる資産”へと変わるのです。
音楽だからできる「地域の記憶の定着」
市民の歌が持つ最大の価値は、
単に「存在していること」ではなく、
人々の中に残り続けることにあります。
地域の風景や歴史、そこに暮らす人々の想い。
それらは言葉だけで伝えるには限界がありますが、
音楽であれば一瞬で共有できる“空気”として伝えることができます。
そして音楽は、繰り返し触れられることで、
個人の記憶から地域全体の記憶へと広がっていきます。
例えば、
・学校で歌った経験
・イベントで耳にした旋律
・日常の中でふと口ずさんだフレーズ
こうした積み重ねによって、
音楽は地域のアイデンティティそのものとして定着していきます。
特に「口ずさまれる」という状態は非常に重要です。
誰かに強制されるのではなく、
自然と口から出てくる。
その状態になってはじめて、
音楽は日常の一部となり、長く生き続けます。
さらに音楽は、
世代を超えて共有される力を持っています。
親から子へ、子から次の世代へと、
同じ旋律が受け継がれていくことで、
地域の記憶は連続していきます。
その意味で市民の歌は、
単なる楽曲ではなく、
地域の時間をつなぐ媒体とも言える存在です。
そして今回のように、
現代に合わせて届け直すことで、
その流れを未来へと延ばしていくことができます。
音楽は、
地域の価値を「理解させる」のではなく、
自然と感じ、共有される形で定着させる力を持っているのです。
「掲げているだけの言葉・残っているだけの歌」を、そのままにしていませんか
この記事を読んで、
「今ある社歌や自社の理念も、届け方次第で価値が変わるのかもしれない」
「額縁に入ったままの言葉を、今の時代に届く形へ整えたい」
と感じた方も多いのではないでしょうか。
けれど実際には、その想いがあっても、
“大切に残しているだけ”で止まってしまうことは少なくありません。
大事なのは、過去を否定することではなく、
すでにある大切な想いを、自然と口ずさめる「生きた音楽」へと再設計することです。
今ある資産の届け方を整理してみる
下のフォームは、「メールアドレス」と「お名前」「一言」だけで送れます。
まだ具体的な依頼内容が決まっていなくても大丈夫です。
- 昔作った社歌や地域の歌を、現代に合うアレンジで復活させたい
- すでにある理念やスローガンに「プロの歌」で熱量を与えたい
- 今ある楽曲や言葉を“組織の共通言語”として再設計したい
アイデンティティの再設計・ご相談フォーム
※営業は一切行いません。まずは、今ある歌や想いをどう活かしていくかを整理するところからご一緒します。
ソングメーカー代表
井村淳也が直接お話を伺います。
まとめ|伝統は「届け直す」ことで資産になる
伝統は、ただ残しておくだけでは十分ではありません。
使われ、触れられ、共有されてはじめて価値を持ちます。
そのためには、
現代の環境に合わせて届け方を見直し、
自然と受け入れられる形へと再設計することが不可欠です。
今回の市民の歌のリメイクは、
まさにその一例です。
伝統の本質を守りながら、
新しい形で届け直すことで、
過去の価値を未来へとつなぐ資産へと変えていくことができます。
そして音楽は、
そのプロセスにおいて最も強力な手段の一つです。
言葉を超えて伝わり、
感情と結びつき、
世代を超えて共有される。
だからこそ音楽は、
地域の記憶を定着させ、未来へと継承していくための最適なメディアなのです。
ここまで読んで、
少しでも「今ある歌を、このまま眠らせたくない」と感じた方へ。
まだ何を変えるべきか明確でなくても大丈夫です。
大切なのは、伝統を壊すことではなく、
今の時代に届く形を一緒に見つけていくことです。
「この歌も、もっと自然に親しまれる形にできるだろうか」
そんな一言からでも構いません。



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