
みなさんこんにちは!ソングメーカー代表兼制作者、中小企業診断士の井村淳也です。
経営者の方とお会いするたびに思うこと。
「技術力には自信があるんですよ」
そう胸を張る経営者の方は少なくありません。
しかし、それが伝わるべき相手に伝わっているだろうか?
社長の思いはしっかり届いているのだろうか――これは診断士として多くの現場で痛感することです。
こちらは私が中小企業診断士として代表を務める、ソング中小企業診断士事務所のホームページです。

製品の性能は申し分ない。技術にも自信がある。
けれど、その価値が「相手に伝わらない」という悩みは、特にBtoB製造業の現場でしばしば耳にします。
図面、仕様、スペック、価格──
多くの企業は、“比較可能な情報” を根拠に価値を伝えようとします。
しかし、今の市場では、そうした機能的な差は容易に埋まり、すぐに追いつかれ、横並びになってしまう。
実際に私が支援したある中堅製造業でも、
「うちは技術力があります」「品質で勝負しています」と語りながら、
その“技術力”や“品質”がどのように生まれ、なぜ他社とは違うのか──
その“物語”が言語化されていませんでした。
人は、理解したから選ぶのではなく、共感したから選びます。
スペックの比較ではなく、
「なんだかこの会社が好きだ」「この人たちと仕事がしたい」という感情が、
最終的な意思決定を左右します。
にもかかわらず、企業はその “情緒の部分” を語ることを、どこか後回しにしてしまう。
本記事では、
無形の価値をどのように“伝わる形”にしていくのか。
そして、情緒価値はどのように“設計”され、共有され、文化として根付いていくのかを掘り下げます。
最後には、なぜ音楽がその役割を担うことができるのか。
「感じられるブランド」を成立させるための核心に触れていきます。
この記事を読むことで得られること
- 技術・品質だけでは差別化しにくいBtoB製造業の現実と、選定基準が「情緒価値」に移る理由がわかります
- 無形の価値を伝えるための基本設計(物語の外化 → 共有メディア化 → 体験設計)の流れがつかめます
- 社歌・PRソングを含む“音”の活用が、理念や文化を「感じられる状態」に変える具体的な場面像を得られます
まず結論:製造業の差別化は「技術を説明すること」ではなく、物語と体験――とりわけ音楽――で情緒価値を再現し、相手の記憶に残す仕組みづくりです。
情緒価値とは何か|企業が今すぐ取り組むべきブランディングと選ばれる理由
機能価値だけでは差別化できない市場構造と企業の課題
多くの企業は、自社の強みを語るときに「機能価値」を起点にします。高い品質、優れた性能、迅速な対応、精度の高い技術──確かにそれらは、企業としての誇りであり、努力の積み重ねです。
しかし、今日の市場は 技術や情報が高速で模倣される時代 です。ある業界で一社が新しい技術を打ち出せば、半年も経たずに類似製品が登場し、比較サイトや営業資料によって「横並びの表」へと押し戻されていきます。
とりわけBtoB製造業では、「同じものを、同じ品質で、同じ価格で作れる企業」は珍しくありません。だからこそ、取引先の選定における決定要因は、スペックや価格といった “合理的な比較項目” から離れ、「この会社と仕事がしたいかどうか」という 感情の領域 に移りつつあります。
技術力は企業の強みではある。しかし、その技術力を「選ばれる理由」に変換できている企業は少ない。技術や品質そのものよりも、その背景にある思想・人・文化が“意味として届くか” が問われる時代にきています。
選ばれる理由は感情の手触りに移っているというマーケティングの本質
人は情報だけで意思決定をするわけではありません。合理的に比較し、理解した上で選んでいるように見えて、実際には 「なんとなく」 の好感や共感が選択を後押ししています。
例えば、営業担当が誠実だったから。工場見学で職人の表情が印象的だったから。創業者の話を聞いたときに「この会社は信頼できる」と感じたから。
それらは、いずれも数値化できません。しかし、確実に「意思決定」を左右します。
マーケティングの世界ではこれを 「情緒価値」 と呼びます。それは、機能価値の上に乗る“余白”のようなものではなく、企業が本当に選ばれる理由そのもの です。
選ばれる企業は、顧客の中に 「この会社らしさ」 という感覚の輪郭を残しています。その輪郭こそが ブランド です。
情緒価値は記憶として企業に蓄積される仕組みと可視化の必要性
情緒価値は、単発の感動や一度限りの演出では定着しません。それは、言葉や数字ではなく、“記憶と結びついた感情” として繰り返し体験されることで育ちます。
- 社内で語り継がれるエピソード
- 創業者の理念がにじむ習慣や所作
- 工場の空気、職人の手つき、会議室の佇まい
- 挨拶、展示会での佇まい、社長の言葉の選び方
こうした「目に見えない連続」が、その企業だけの“文化の温度”を形づくります。
そしてその文化は、外部に対しては「信頼感」として、内部に対しては「誇り」として蓄積されていきます。
しかし問題は、これらが 可視化されにくい ことです。写真にも、数字にも、報告書にもなりにくい。
だからこそ企業は、無形の価値を 「伝わる形」に翻訳する必要があるのです。
その翻訳装置こそが、のちに触れる 音楽 であり、社歌・事業PRソング が担う役割になります。
情緒価値が伝わらない企業に共通する3つの課題と解決の方向性
説明が多いことによる魅力の希薄化と情緒価値の損失
情緒価値が相手に届かない企業の多くは、「伝えよう」とするあまり、説明に力を注ぎすぎてしまう傾向があります。
- 「当社の強みは○○です」
- 「他社と比べると△△が優れています」
- 「品質管理体制には□□を組み込んでいます」
もちろん、これらは必要な情報です。しかし、説明が増えるほど“余白”は失われていく。人は、情報量が増えると「理解」へは向かいますが、必ずしも「共感」や「好き」とは結びつきません。むしろ、共感は、理解されない部分にこそ宿ることがある。
たとえば、なぜその技術を磨き続けてきたのか。なぜ、その品質にこだわるのか。なぜ、この製品を世の中に届けたいのか。
「理由」や「背景」や「願い」にこそ、人は心を動かされ、記憶に残します。説明は、情報を伝える行為。情緒価値は、意味を共有する行為です。両者は似ているようで、目的が全く異なるのです。
ストーリーはあるのに共有の形がないという組織の断絶
多くの企業には、実は既に「語るべき物語」があります。
- 創業の原点
- 苦境を乗り越えた経験
- 社内で代々受け継がれてきた習慣
- 職人たちの誇り
- お客様から言われた忘れられない言葉
しかし、それらはしばしば 個人の記憶の中に閉じ込められたまま です。経営陣は知っているが、若手は知らない。ベテランは覚えているが、外から入った人には届かない。「ある」けれど「共有されていない」。存在しているのに、伝わっていない。
情緒価値は、共有されて初めて文化になる。言葉として反復されて初めて、組織の中に連続性を持ち始める。そのためには、物語を “外化” するためのメディア が必要です。それが、文章であることもあれば、映像であることもある。そして、もっとも 感情のままに共有できる形 が、音楽です。
体験設計がないと感情は再現できないという現場の課題
情緒価値は、「感じる経験」があって初めて成立します。どれほど良い理念があり、どれほど感動的な創業ストーリーがあったとしても、人は体験していないものを、自分の中に根づかせることはできません。
- 入社式
- 研修
- キックオフミーティング
- 周年行事
- 朝礼
- 表彰式
こうした「場」は本来、感情を共有し、価値観を再確認するための儀式のような役割を持ちます。しかし現実には「形式化」し、ただプログラムを進行するだけのイベントになってしまいがちです。感情は「情報」ではなく「体験」です。体験には 場の空気、言葉、姿勢、間(ま)、象徴、音 が影響します。だからこそ、情緒価値を伝えるためには 体験設計 が不可欠なのです。
そして、体験を支えるものとして最も強いのが、空気をつくり、感情の波を揃え、記憶を残すことができる音楽です。音楽は、感情体験を「再現」する。何度でも、同じ温度で。情緒価値を定着させるために、なぜ音楽が有効なのかという問いに対して、ここで答えが輪郭を帯び始めます。
情緒価値を音で伝える ― 音楽がブランド価値と企業理念を体験に変える力
音楽は言葉より先に届く感情伝達メディアである
私たちは、言葉を理解するよりも先に、音で世界を感じています。胎児の頃、私たちは意味を理解していません。しかし、母親の声や鼓動のリズムに安心し、感情が動いているのです。
音は、意味づけや判断よりも早く、脳の情動領域に直接届く性質を持ちます。言い換えれば、音は「理解」より前に「感じさせる」メディアです。
だからこそ、音楽は以下のような感情そのものを“場”に生み出すことができます。
- 安心
- 期待
- 高揚
- 静けさ
- 団結
製品説明や理念の言語化が「思考」に働きかけるとすれば、音楽は感情に働きかける表現です。そして、意思決定は常に感情が先に動き、思考が後から正当化する。これは脳科学でも証明されています。
だからこそ、情緒価値を伝えるには、言葉だけでは不十分なのです。
音楽は企業理念や価値観を共通体験として再現する
企業には、固有の空気があります。会議の話し方、工場の佇まい、社員の目線、挨拶のトーン。それらはすべて、企業文化を形づくる「無形の要素」です。
しかし、その空気を共有し再現することは難しい。だから、組織内にはしばしば認識のズレが生まれます。
- “伝わっているつもり” の経営陣
- “聞いてはいるが腹落ちしていない” 管理職
- “そもそも言葉の意味がピンとこない” 若手
企業理念は「読む」だけでは浸透しません。行動指針は「唱和」だけでは根づきません。必要なのは、共通体験としての理念の“再演”です。
音楽は、まさにそれを可能にする表現です。音が流れた瞬間、その企業らしい“情緒の温度”を、全員が同時に思い出せる。時間も場所も超えて、同じ感情の場を共有できる。これは、言葉や資料では絶対に再現できない領域です。
社歌やPRソングは企業の情緒価値を記憶する装置になる
社歌や事業PRソングは、ただの“曲”ではありません。それは企業の情緒価値を記憶として保存する装置です。
- 入社式で流れると、初心を思い出す
- 朝礼で流れると、気持ちが揃う
- 周年式典で流れると、歩んできた時間が胸に降りてくる
- プレゼンや展示会で流れると、「この会社らしさ」が一瞬で伝わる
言葉は忘れられます。パンフレットはしまいこまれます。映像は再生しなければ始まりません。しかし音楽は、一瞬で記憶を呼び起こし、感情を同じ場所へ連れていくことができます。
だから社歌は「飾り」ではなく、理念を“体験できる状態”に変換する手段です。情緒価値とは、企業が「何を大切にしているか」の体温です。社歌とは、その体温を聞こえる形にしたものです。
まとめ ― 音楽が企業ブランディングにおける情緒価値を強化する理由
情報が飽和する時代において、企業が本当に選ばれる理由は、感情の領域にあります。製品の機能や価格の差はすぐに縮まります。しかし、情緒価値は模倣できません。なぜなら、それは企業が生きてきた時間そのものだからです。
その価値を伝えるためには、言葉だけでは足りません。理念は「説明」ではなく「体験」で届きます。そして、体験を形にする最も強い媒体が、音楽です。
社歌・PRソングは、企業の物語、文化、誇りを記憶として残し続ける“情緒価値の装置”です。無形の価値を伝えるとは、企業の“らしさ”を、感じられる形にすること。その核心に、音があるのです。



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